住宅ローン金利は変動と固定のどちらがよいのか

一般的に、住宅購入時は住宅ローンを組む方が多いかと思います。現金一括払いでなければ、住宅ローンは比較的昔からある住宅購入手段のひとつと言えます。今回は、住宅ローンに適用される金利について、考えていきたいと思います。

住宅ローン金利

住宅ローン金利の種類

住宅ローンを組む際に、金融機関の担当者から聞かれるのが、「変動と固定のどちらでお考えですか?」という質問があります。住宅ローンの金利は3つに分類することができ、以下のそれぞれについて確認していきましょう。

  1. 変動金利型
  2. 全期間固定金利型
  3. 固定期間金利選択型

変動金利型の住宅ローン

変動金利型というのは、そのときの金融情勢に応じて決定される金利水準に応じて、借入金額が変動するタイプとなります。このタイプは、ローンの返済期間中でも、金利が変動していくタイプですね。そのため、金利の動きによっては、利息の総額が借入当初よりも大きくなるケースもありますし、逆に借入当初よりも小さくなるケースもあります。

将来の金利変動リスクを借主が背負うことになるため、(以下で述べる固定金利型と比較すると)リスクのあるタイプと言えます。

メリット
・借入以後に金利が低下すると、返済額が減少(または返済期間が短縮)する
・固定金利型よりも低い利率で借入ができる

基本的に、変動金利は経済と連動することとなるのですが、これまでの日本のような”物価上昇率(インフレ率)>変動金利上昇率”という状況だと、借入金額は相対的に目減りすることとなり、本質的ではないものの、副産物的なメリットが生じることもあります。

デメリット
・借入以後に金利が上昇すると、返済額が増加(または返済期間終了後に未払い分を一括返済)する
・将来の返済額が確定しないため、返済計画が立てづらくなる
・市場金利が急上昇した場合、未払利息が発生するかも

未払利息をデメリットに記載したものの、現実問題として未払利息がデメリットとして顕在化するシナリオは、かなり極端な事例を想定しないと起こらないため、ほとんど気にする必要がないとも言えます。

全期間固定金利型の住宅ローン

こちらは変動金利と異なり、借入時の金利が全期間変わらないタイプの住宅ローンとなります。 住宅支援機構が提供するフラット35がこれに該当します。他金融機関と提携したフラット35の商品も多数あり、比較対象とされることも多いですね。

メリット
・借入以後に金利が上昇した場合でも、利息は一定
・借入時にキャッシュフローが固定されるため、返済計画を確定できる

メリットは金利の変動によって変化してしまう部分はあるものの、将来の金利変動から受けるリスクを借入時に排除できる点が最も大きなメリットと言えます。

デメリット
・借入以後に金利が低下しても返済額が変わらない
・変動金利と比較して、高い利率で借入することとなる
・借入時には一定の自己資金が必要となることが多い
・購入物件が一定の要件を満たす必要がある

一番のデメリットは「高い利率で借入すること」ですね。借入期間は変動と固定で同じだったとしても、固定では高い利率で借り入れることとなります。

なぜ固定の方が高い利率なのか、という話は参照する指標が異なることもありますが、金融機関の手数料的な側面も強く、安心を買う代わりに利ザヤとして高い保険料を払うような形になっています。

固定期間金利選択型の住宅ローン

変動金利と全期間固定金利の中間的な位置づけの商品となりますね。「借入後3年間X.XX%」など、一定期間は固定金利が適用され、一定期間が終わった後に変動金利へ移行するタイプの商品となります。

メリット
・借入以後の一定期間は固定金利となりキャッシュフローが確定する
・一定期間終了後に借換などで改めて商品を見直す機会がある

少々メリットとは言い難い面もあるのですが、固定期間金利選択型の場合は固定期間が終了時にそのまま変動金利とするか、別の固定期間金利選択型へ借換するなど改めて再検討できるのが特徴として挙げられます。

というのも、借入時に全期間固定金利を選択する場合、変動金利を選択する場合と比較するとどちらのメリットもそれなりに入れつつ、借入時の判断が誤っていたとしても低リスクで、一定期間後に別の商品に乗り換えるタイミングがあるというのが特徴ともいえます。(心理的に”固定金利型”から”固定金利型”へ移行する場合や”固定金利型”からより利率の低い”変動金利型”へ移行する方がし易い傾向にあります)

デメリット
・借入以後に金利が上昇すると、返済額が増加(または返済期間終了後に未払い分を一括返済)する
・変動金利に存在する1.25倍ルールが適用されない
・一定期間の固定金利は全期間固定金利型と比較して低利率で借入できる

結局、一定期間以前は変動金利より高い利率となり、一定期間は変動金利となることを考えると少々使い勝手が悪い印象の商品となります。

変動金利が有する1.25倍ルール(金利上昇時であっても、5年経過後の毎月支払額見直し時に、従来の1.25倍を超える返済額にはならないルール)が適用されないため、(稀なケースかと思いますが)急激な金利上昇局面だと支払額が大きく増加してしまう可能性があります。

住宅ローン金利の決まり方

変動金利型の住宅ローン

変動金利型の場合、”短期プライムレート”と呼ばれる日本銀行が決定する貸出利率を指標として、金利が決定されます。

この短期プライムレートとは、金融機関が企業へ1年未満の融資を行う際に使用する最優遇金利であり、日本銀行の政策金利に影響されるのが特徴です。この金利をベースに、各金融機関は住宅ローン金利を含め各種ローン商品の貸出金利を決定していきます。

ちなみに、短期プライムレート(最頻値)は直近10年間1.475%と変動していません。日本銀行が毎月の率を公表しているので、誰でも確認が可能です。

参考 長・短期プライムレート(主要行)の推移 2001年以降日本銀行

MEMO
変動金利は短期プライムレートを基準に各金融機関が設定しています。ですが、変動金利が各金融機関で異なってくるのは、各金融機関のコスト率や頭金有無や住宅要件等により優遇率が異なってくるため、差が生じてくることとなります。一般的に、固定費が大きい都市銀行よりもネットバンクの方が優遇された率を提供できる傾向にあります。

全期間固定金利型の住宅ローン

フラット35などの全期間固定金利の住宅ローンの利率は、10年国債の利率をベースに決定されます。また、各金融機関では、10年国債だけでなく長期金利の状況なども加味し、今後の金利動向を見据えて決定されるケースもあります。そのため、10年国債を主軸にしつつも、他の指標も確認しておくのが良いでしょう。

さて、メインとなる”10年国債”なのですが、聞いたことある方はいますでしょうか。国債をご存じの方は多いかと思いますが、国債は日本政府が国の運営に必要な資金を集める為に発行する債券のことですね。額面の金額が戻ってくる時期が10年後のものを”10年国債”と呼んでいます。この”10年国債”の利率に住宅ローンの利率が連動することとなっています。

国債の利率は、財務省のホームページから確認することができますが、マイナス金利政策を導入して以後は短期のものはまだしも10年国債でさえもマイナス圏に入っており、極めて低金利の状態が続いています。

(出所:財務省ホームページより筆者作成)

参考 国債金利情報財務省

固定期間金利選択型の住宅ローン

固定期間金利選択型の住宅ローンの場合、固定金利と変動金利の中間的な利率が設定されます。

このとき参照される利率は、金利スワップと呼ばれるスワップレートが使用されており、「変動金利と固定金利」を交換する際の固定金利をベースに決定されます。

基本的には、「変動金利と固定金利」の間の率と認識しておくと良いでしょう。

住宅ローン金利の変化(経済環境によるもの)

では、住宅ローンの金利はどのような場合に変化するのでしょうか。これまで紹介した話に加えて、好景気の状況、不景気の状況でそれぞれ考えてみたいと思います。

好景気であれば、金利は上昇しやすい

好景気である場合、一般的に市中金利は高くなる傾向があります。企業の投資意欲は高く、金融機関の貸し出しも増える状況となっているのが好景気の状況です。

日本銀行は市場の過熱を抑えるために、緩やかに金利を引き上げ、経済バブルが生じないように金融政策で経済をコントロールしていきます。そのため、好景気には金利が増加していくことが一般的、つまりは、住宅ローンの利率も好景気であれば、上がっていくことが予想されます。

ただ、足元の日本経済は戦後最長のイザナギ景気超えの景気拡大局面になっていましたが、住宅ローンは過去最低の水準にとどまる結果となっています。これは日本銀行の金融政策による影響が大きいのは間違いありません。

いずれにせよ、本当に日本が好景気であるならば、住宅ローン金利も緩やかに上昇していくことでしょう。

不景気であれば、金利は低下しやすい

不景気の場合、企業の投資意欲は下がり、金融機関は貸し倒れリスクも加味して貸し出しを渋る状況となってきます。日本銀行は不景気の局面では、短期金利を低く抑え、より市中にお金が回りやすくなるように金融政策で調整を行ってきます。

日本銀行が短期金利(つまりは短期プライムレート)を低く抑えることとなるため、住宅ローンの金利についても低い利率で借りることができます。

1995年以後のバブル経済崩壊後の日本経済は低金利が続いており、現在ではマイナス圏の率で推移しています。短期プライムレートは一定ではありますが、金融政策として過去最低の水準で推移させていることは間違いありません。

住宅ローン金利の変化(金融機関同士における競争)

経済環境による日本銀行の金融政策に影響を受ける面以外に、金融機関間の競争過熱による適用金利の変化が挙げられます。現在、借入時に適用される金利は、(新規・借換で若干異なりますが)

適用金利=店頭金利-優遇金利

として決定されます。店頭金利は前述した”短期プライムレート”+”1.0%”等の指標に基づき、各金融機関が決定した率となります。

一方で、優遇金利は各金融機関がコスト競争に伴い、顧客確保のための努力で引き下げている率となるため、優遇金利が大きい金融機関ほどお得に借り入れができる現状となっています。

店頭金利は長期間変動がありませんが、直近数年間で適用金利が下がっている理由は、この優遇金利が引き上げられているためであり、各金融機関同士の利益/コスト競争によるものと言えます。

今後、この過熱した競争の状況に変化が起きた場合(例えば、住宅需要の拡大に伴う借手の増加など)、優遇金利は低くなり、自然と適用金利が上がっていくことが予想されます。

変動金利と固定金利はどちらにすべきなのか

この疑問はかなり前から、不動産購入時に悩むポイントとして挙げられてきました。2011年頃であれば、史上最低水準の金利環境であり、今後金利が下がることはないと言われたほどでしたが、マイナス金利が適用されたことや、ネットバンクの進出により、更に金利が下がる結果となりました。

好景気になるかどうか

最も大きい要素として、経済の動向が挙げられます。もちろん経済の動向を確実に当てることは難しいため、借入時に判断する基準にはなりがたいのですが、

  • 日本銀行はアベノミクス回復期に利上げをしてこなかった
  • 2020年3月のコロナショックに伴い市場だけでなく、実体経済も含めて、大打撃を受けている
  • 日本銀行の金融政策は引き続き緩和のスタンスを維持

上記のように、2020年現在の日本の経済環境だと、日本銀行が金利を引き上げる要素が少ない状況が当面続くと予想されます。

変動金利と固定金利の差がどの程度あるか

変動金利と固定金利の差がどの程度あるか、については借入を検討する際に注意した方がよい指標のひとつとなります。変動金利は短期金利に影響され毎月変動するものの、2020年3月時点で最も低くて0.38%程度、都市銀行であれば0.47%~の金利で住宅ローンを組むことが可能です。

一方で、フラット35などの全期間固定型のローンである場合、最も低い利率は0.85%、都市銀行であれば1.25%~となっていました。

ざっくり変動金利と固定金利の差は0.75%であり、この金利の差が金利を固定することへのコストとなります。例えば、3,000万円の借入をする場合には、金利が上昇するまでの間、最大年間22.5万円のコストを払うようなイメージとなります。

足元の金利状況から0.75%金利が緩やかに増加するのが5年後であれば、56.3万円程度(毎年平均11.3万円×5年間)のコストで金利上昇リスクをヘッジできたという話になります。逆に言うと、この金額分だけ金融機関の収益になるという解釈をしても差し支えないかと。

ただ、将来の変動金利=借入時の固定金利の状況では、ヘッジコスト56.3万円だけ損をすることとなるため、その後も金利が増加していき1.0%、1.5%と上がっていく場合には、固定利率のメリットをしっかりと享受することができると言えます。

日本がデフォルト(債務不履行)するかを真剣に考えるか

金利が急騰する原因の一つに、日本がデフォルトした場合、すなわち債券価格の暴落というものがあります。指標となる国債の価格が暴落する場合(買い手が付かない状態)、金利は大きく上昇することとなります。

現在、日本銀行はマイナス金利を適用していることもあり、国債の買い手は減少傾向にありますが、一般論として日本国債は安全資産に位置付けられているため、リスクオフの環境下では引き続き買われる現状となっています。

仮に、日本という国の信用が失墜し、国債の暴落、日本円の暴落、ハイパーインフレーションなどの状況に陥った場合、(金融機関がそのような状況でも生き残れているのかは置いといて)変動金利は非常に高い金利が適用され、固定金利は契約時の金利が適用されることとなります。

このとき、その他資産価格も連動すること、経済環境がボロボロなっていること、大量の失業者が発生していること(つまりは失業せず働けているかどうか)等、その他の要素により大きく変化し、日本ではまともに就業できる環境、住宅を保有する環境になっていないことが予想されますね・・・。

まとめ:将来の金利上昇に伴うヘッジコストにいくら払えるか

私自身も住宅購入時だけでなく、金利環境は仕事柄よくチェックをしているので、比較的なじみのあるテーマなのですが、金融機関のセールストークやファイナンシャルプランナーのアドバイスの多くは、後ろに自社やスポンサーの利益が見え隠れすることもあって、あまり適切なコメントを載せていないケースも散見されます。

変動金利と固定金利を左右する要素は、経済動向および金融政策であるため、予想することは非常に難しいのですが、2020年3月のコロナショックによる打撃から日本経済が立ち直るには、かなりの時間を要するのではないでしょうか。

とはいえ、変動金利が必ずしも、どの購入者にとっても適しているのかは別問題であり、余剰資金やキャッシュフロー、年間所得との関係も見据えながら判断をすることが望ましいかと思います。以上、ご参考まで。


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