今回は広くて浅いテーマである「賃貸VS持ち家」の議論について考えてみます。いろいろなところですでに議論されていますし、ちゃんとした知識のある人であれば、結論も明らかなのですが、どういうポイントに着目すべきなのか改めて考えてみたいと思います。
目次
”賃貸VS持ち家”議論について考える
まぁ、あまり結論を急ぐものではないですが、「賃貸と持ち家のどちらがお得か」という議論の結論は明らかに・・・
「ケース・バイ・ケース」
であることは確かかと思います。その人の置かれている環境や地域によって、どういった物件が望ましいのか、変わることになりますし、そもそもどういうライフプランが予想されるのかによっても、結論は左右されると言えます。
ただ、ある一定の仮定を置くことで、相対的にどちらの方がお得、と言うことは可能です。なので、いくつか賃貸と持ち家の特徴を確認しつつ、賃貸派、持ち家派のそれぞれに潜むメリット、デメリットを考えることとしましょう。
賃貸の特徴
賃貸は、生まれてからずっと「実家暮らし」の人を除けば、多くの人が利用したことがある居住方法ではないでしょうか。簡単ではありますが、以下に賃貸で家を借りて住むことの特徴を列挙しました。
- ずっと家賃を支払わなければならない
- 更新月を除けば家賃の支払いのみであるためキャッシュフローは安定的
- 引越がとにかく容易
- 住みたいところ、住みたい時期を選んで住むことができる
- 住み替える度に敷金、礼金、仲介手数料がかかる
やはり賃貸のいいところはお手軽に好きな街に住める、ということじゃないでしょうか。家賃が高いか安いかの問題はありますが、住もうと思えば青山・赤坂・麻布と呼ばれる高級住宅エリアに住むことだってできますし、六本木ヒルズに住むことだってできます。
持ち家の特徴
”持ち家の購入”、それはすなわち”憧れのマイホーム”を手に入れるということ・・・と、昔は言われてましたが、今の世の中だいぶ状況は様変わりしているような気がします。必ずしもマイホームが必要かという議論は少なからずあり、あくまで一種のステータス的資産という印象も最近では出てきています。
持ち家の特徴を表すと、以下のようなものが挙げられます。
- 持ち家は最終的に資産となる(ただし価格変動リスクを受ける)
- 自宅購入時は不動産価格の数%にあたる諸経費がかかる
- 頭金の金額次第で月々のキャッシュフローを調整可能
- リフォームで自分好みに内装を変更可能
- 賃貸や売却をすることも可能
- 住宅ローン以外にランニングコスト(固定資産税等)が必要
やはり最終的に自分の資産となる点は非常に強いメリットではないでしょうか。戸建てとマンションでも特徴はかなり異なるので、一色淡にして記載するのはやや難しいところなのですが、基本的には同じメリットを持っています。
また、賃貸と持ち家を比較した場合、現在の低金利環境下においては持ち家の方が支払コストが安くなる傾向にあります。もちろん地域にも依るところは大きいのですが、
- 持ち家のランニングコスト:住宅ローン返済額+管理費+修繕積立金
- 賃貸のランニングコスト:賃料
と考えると、(持ち家のランニングコスト)<(賃貸のランニングコスト)となるケースはかなり多いのが特徴です。
同じ物件であれば、購入してしまうケースの方がお得
極端な例かもしれませんが、同じ物件に住むという前提で考えると、賃貸と持ち家では、持ち家として購入する方が金銭的にお得であることが多いです。
一般的に、都内で賃貸物件の家賃とマンション価格を比較すると、大体のケースで賃貸価格の200倍~300倍がマンション価格となるケースが大多数でしょう。統計的に調査されて算出された数値ではないですが、投資利回りや金利との関係から一定倍数以内に収まるケースがほとんどとなります。
例えば、家賃10万円の物件の場合、2,000~3,000万円の価格でマンションが販売されているケースは都内で多いことが挙げられます。このマンション価格の設定は16.7年~25年の家賃相当と同じ価格であり、単純に考えると、この年数分だけその物件に住むのであれば、購入してしまった方が良いということとなります。
賃貸がもつ致命的なデメリット
賃貸がもつデメリットの中でも致命的なものがあります。それは、「収入が尽きたら最後」ということです。
無収入では賃貸を続けられない
賃貸は住んでいる限り家賃を支払い続けなければなりません。定年以降の収入がゼロとなった状態では、賃貸の家賃を捻出しつつ、まともに生活しようとすると、年金収入だけではとても足りないことがわかります。
国の年金だけで老後の生活はカバーできない
例えば、厚生年金に40年加入していた夫婦1世帯をモデルケースとして考えると、老後に受け取れる年金額は約21万円(夫婦の老齢基礎年金+老齢厚生年金として試算)となります。ここから家賃、光熱費、水道代を除き、生活費、医療費等の必要なコストを考えると、趣味や余暇に使える金額はほとんどなく、決して余裕のある生活はできないでしょう。
もし厚生年金ではなく、国民年金のみであった場合は、約13万円程度となるため、極めて厳しい生活になることが予想されます。
かなりアバウトな計算をしていますが、家賃もかなり安いところを選ばざるを得ませんし、さらには生活費もギリギリまで下げないと暮らしていけないケースが多いかと思います。少なくとも賃貸生活を都内で続けるのはかなり厳しいかと思います。
持ち家がもつ致命的なデメリット
賃貸のデメリットで老後における過酷な生活について述べましたが、決して持ち家が順風満帆な生活が送れる選択肢というわけではありません。
物件選びを失敗すると人生が詰む
極端な書き方をしていますが、”物件選びを失敗すると人生詰む”のが持ち家サイドの特徴ではないでしょうか笑。失敗事例を挙げれば、星の数ほど出てくるのですがいくつか事例を記載しますと、
- 資産価値が住宅ローン返済額以上のスピードで落ちていく物件
- 身の丈に合わない物件を購入し住宅ローンが返せない物件
- 買い手が見つからない物件
このあたりはかなり手痛い事例かと思います。売却を考えた際に住宅ローン残債額以上で売れない物件や賃貸に出しても住宅ローン返済額をまかなえない物件については、負の資産となってしまいます。
売る場合も、貸す場合も、手元キャッシュが必要となるため、次の選択肢が大きく制限されるのはもちろん、将来が苦しくなってしまうため、極めて厳しい状況に追いやられてしまうのは間違いないでしょう。
まとめ:老後に入る前までに持ち家取得するのがベター
人生という大きなスパンで考えた場合、老後の問題は決して避けて通ることはできません。老後になった際に住める場所がないという状況は死活問題となります。そのため、老後に入る前までに、持ち家があることが望ましいかと思います。
もちろん老後でも賃貸に住むことができない、という訳ではありませんが極めて厳しい環境となることは避けられないでしょう。
マイホームの購入だけが、自宅取得の方法ではありません。皆が使える手段ではりませんが、相続でもいいし、お金持ちの方に譲ってもらったりすることも選択肢としてはありでしょう。老後は別に都内に済む必要はないため、割安な地方の一軒家を購入するために資金を貯めておくという方法もアリではないでしょうか(利便性はさておき・・・)。
ライフプランを考えると、現役時代は来るべき持ち家購入に備えて貯蓄に励むのも良い方法と思います。また、好きなところに自宅を構えて、資産としての住居を構えるという考えもありでしょう。
ただ、賃貸派でも持ち家派でも、今回記載したような致命的なデメリットを抱えるような事態にならないように、コントロールしていくべきなのは間違いありません。以上、ご参考まで。