プレゼンテーションスキルとは、”相手の理解を得るために自分の考えを正確かつ簡潔に説明する技術のこと”である。相手の理解を得るために「論理性」が必要であることは言うまでもないし、自分の考えを正確に伝えるためには伝える内容を「情報整理」しておく必要がある。
また、自分の考えに同意してもらうことも含めるのであれば「表現力」というものも必要になるだろう。プレゼンテーションスキルはこのようないくつかのスキルを組み合わせることで飛躍的に向上させることができる。今回は、これから社会に出ていく新社会人、人前で話す立場にある方に向けて、意識するだけで簡単にプレゼンスキルを向上させるコツを紹介したい。
目次
わかりやすい説明とは
プレゼンテーションの大部分は”説明をする”という行為によって占めている。この行為は、”相手の頭の中に情報を入れていくこと”と言い換えることもできるだろう。もし仮に、相手の頭の中に入れるべき情報が、秩序や整理されていない情報であれば、なかなか入っていくことが難しいのは、想像しやすいのではないだろうか。
そのため、伝えたい情報は、事前に整理をした上で伝えることで、より効果的に相手に自分の主張・意見を伝えることができるようになる。”一番伝えたいこと”をどのように話したら、相手の頭に残るのかを考えることが大切なのである。
”伝える”という行為を3段階に分ける
”伝える”という行為の目的について、以下の3段階のフェーズに分解して解釈してみよう。
- 自分の意見・主張を相手に理解させること
- 自分の意見・主張を相手を納得させること
- 自分の意見・主張で相手に行動させること(または同意してもらう)
これら3つの段階に分けて考えると、”伝える”という行為は、説明内容を相手側が十分に理解し、相手側が納得してもらわないと、相手に行動を起こしてもらうことができない、という段階的なものであることがわかるだろう。
もちろん相手に行動をさせなくてもよい場合も、実社会においては多いが、相手に自分の意見を理解して納得してもらうことが重要であるのは間違いなく、これらの各フェーズがプレゼンテーションの大きな目的となっているのは間違いない。
では、相手に理解・納得してもらうプレゼンテーションをするにはどのような点に気を付ければいいのだろうか。
その1 結論を先に述べる
プレゼンテーションの基本のキと呼ばれるくらい非常に重要なことが、「結論を先に述べる」ことである。なぜなら、最初に結論を述べた上で理由を述べる方が相手に圧倒的に自分の意見が伝わりやすいからだ。
日本人のプレゼンテーションにしばしば見られる傾向として、具体的な事象を説明し流れや理由をひたすら補足し続け、その結果として結論を述べるやり方が散見される。このやり方はたしかに小説のような話の順序や思考プロセスに共感しやすい側面があるものの、結局重要な結論が最後までわからず、必要以上の時間を要してしまう、という大きな欠点がある。
ビジネスプレゼンテーションの場(社内交流という趣旨ではなく、取引先や意思決定の場)では、たくさん喋ることによるメリットは実は薄く、必要十分な意味のある発言が求められることに留意したい。
その2 事実と判断を区別して意見を述べる
こちらもプレゼンテーションスキルでは、基本的な話である。だが、意識しているかしてないかで相手への理解度はまるで異なるという点に注目したい。
事実(目に見える現象、起こった出来事)と判断(事実を基に考えたこと)を混同した説明は、利き手の認識・判断を歪める傾向にある。ロジカルなビジネスの現場では多少混じった発言をしても、周りが非常に聡明である(優秀である)こともあり、ほとんど違和感なく受け入れられることも多いが、少し知識量が劣る相手や専門領域とは異なる分野の相手である場合には十分注意が必要だ。
プレゼンテーションの中では、事実と判断のどちらを話しているのか軽く断り(ことわり)を入れてから意見を述べると良い。
その3 話の構成を述べる
説明内容を区切る(話の構成を最初に伝える)ことで、利き手が説明を受け入れる準備ができるように誘導することが重要である。話の構成をある程度区切ることで、相手の頭の中で情報を整理しやすくする効果がある。そうすることで、後段で説明する内容が前段の説明の論理的理由なのか、結論に至る思考プロセスなのか、相手に容易に理解してもらうことができるようになるためだ。
冒頭で話の構成を明示する方法の他にも、利き手が次に何を話すのか予測できるよう、接続詞を活用する方法もある。海外テレビ番組であるTEDに出演するようなプレゼンが上手い人ほど、全体の構成を強く意識しているのは言うまでもないであろう。
プレゼンテーションのコツは先に述べた3つを活用すると良いのだが、そもそものプレゼンテーションの中身をどのように作ればよいのか、という疑問がある人も多いのではないだろうか。
フレームワーク思考を活用する
プレゼンテーションのコツは先ほどの3つを取り入れるだけで、姿形の印象はだいぶ変わってくるはずだ。だがしかし、せっかく内容に意味のあるプレゼンテーションであっても、先の説明のコツを入れただけでは不十分な場面は多い。
本来であれば、説明を行う前に、プレゼンテーションで述べる考えを整理・分析する必要がある。闇雲に考えるのではなく、フレームワーク(考えるための枠組み)を使って考えることで抜け漏れなく検討できると言えよう。
ここで詳細は割愛させていただくが、話の内容によってMECEやSWOTなど適切なフレームワークを用いると、準備にかける時間効率および質的な面から充実したプレゼンテーションにつながるだろう。
ロジカル・ プレゼンテーションを目指す
プレゼンテーションが目指すべき方向性として、”ロジカル・プレゼンテーション”が挙げられる。このロジカル・プレゼンテーションとは、次のような一連の流れ(複数意見はあるものの大きな流れは共通している)を指す。
- 収集した情報を冷静に把握する(情報整理)
- 自分の中で整理分析する(判断)
- 独自の考えをまとめる(意見)
- わかりやすく伝える(プレゼンテーション)
上記のそれぞれは、さも当たり前の話であるのだが、相手に納得感をもって理解してもらうために、ロジカルプレゼンテーションの考え方、スキルを理解習得しておくと、より充実したプレゼンテーションができるのは間違いないだろう。
準備段階からロジカルプレゼンテーションの流れを意識して、内容を組み立てることができれば、それだけでプレゼンテーションの質は大きく上昇することとなる。
まとめ:プレゼンテーションはちょっとのコツで印象が大きく変わる
先にも述べさせていただいたが、プレゼンテーションの印象はプレゼン内容の構成で大きく変わるものである。一言でロジカルプレゼンテーションと言ってしまえば、それだけであるが、ちょっとしたコツを押さえておくだけで、プレゼンターの評価もだいぶ変わってくるはずだ。
新社会人になる人にとっては、様々な場面で発表や意見を述べなくてはいけない場面が多いと思う。上記のスキルだけで全てをカバーできるわけではないものの、コツの一種として活用いただければ幸いだ。以上、ご参考まで。