給与計算手続きの年間スケジュールと年齢別手続き

こちらの記事では、人事上での手続きである給与計算について、年間でのスケジュールと年齢別にどのような手続きがあるかを確認していきます。会社内、会社外で色々な対応が必要となってくるため、人事担当者は必ず全体像を頭の中に入れた上で、取り組む必要が出てきます。ルーチンワークの一種ではありますが、まずは大きな流れを確認していきましょう。

給与計算はミスなくできて当然という意識を

人事側のスタンス・ポリシーを考える上で、従業員がどのような意識で人事の手続きを見ているのかを考えてみます。すると、会社で働く従業員の視点から見れば、給与計算や労働・社会保険手続きの業務は当然にして会社側がしっかりとやってくれている、という認識があるのは比較的想像し易いのではないでしょうか。

会社側の事務手続きが粗雑であり、その結果となる支払い額に誤りがあるのであれば、従業員からの信頼は失墜することになります。また、会社へのクレームに繋がることも考えられます。

最悪の場合、従業員の離職、訴訟問題に発展するケースもあり得るため、給与計算手続きは完璧に行われなければならない、と人事側は理解しなければなりません。

それらを踏まえた上で、年間でのイベント、手続きを確認してみたいと思います。

主な年間スケジュールと年齢別手続き

人事部にいると、会社内での対応、会社外での対応の双方で頻繁にするべきことが出てきます。もちろん、企画業務ではなく定常業務として、手続きが多様にあるため、一度年間でのスケジュールをある程度把握しておくことは非常に重要でしょう。

年間スケジュール

社内手続きとして、例えば、給与改定、昇格・降格、賞与の計算・支給、人事異動による異動届、新卒採用などの大量採用など、会社内における人事イベントにより様々な手続きが必要となってきます。


1月(末日期限)

法定調書・合計票を税務署へ届出
給与支払報告書・総括票を市区町村へ届出

4月

雇用保険料率の改定
健康保険料率(介護保険料率)の改定

6月

市区町村からの通知による住民税特別徴収額の更新

7月(10日期限)

労働保険概算・確定保険料を労働局・労基署へ申告・納付(年度更新)
健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届を年金事務所・健保組合へ届出

9月
社会保険料の改定(10月納付分より)

10月
最低賃金の引上げ

12月
年末調整による従業員からの所定書類の回収

ざっと並べてみると、上記の手続きはどの会社にとっても該当するものとなります。社外の出来事として、毎年、保険料率や最低賃金の変更などへ目を光らせておくことが重要です。

月単位・年単位での業務

上記の年間での業務とは別に毎月単位および年単位で以下のような業務も行う必要があります。

  • 毎月10日まで 前月分の源泉所得税を税務署へ納付
  • 毎月10日まで 特別徴収住民税を市区町村へ納付
  • 毎月末日まで 前月分の社会保険料を年金事務所・健保組合へ支払い
  • 年単位 36協定締結、労基署への届出
  • 年単位 1年変形協定の締結、労基署への届出
  • 賞与支払いから5日以内 賞与支払届を年金事務所・健保組合へ届出

人事部以外へ配属されている社員では、全く気付くことのない手続きも多数ありますが、労働基準監督署への各種協定届出など、昨今で重要視されている働き方改革に紐づく手続きも人事の重要な手続きとなっています。

就業状況の管理不徹底などにより行政指導の対象となったり、社名公表などの罰則的な対応を受ける場合もあるため、常日頃から会社の労働環境の実態にも目を配ることは重要です。

年齢別の手続き・人事上の取扱いの変更

年間や月単位での手続きは前述したとおりですが、従業員の年齢を区切りに手続きが必要となるケースもあります。以下、年齢別の手続きや人事上の取扱いの変更として列挙してみました。

年齢別の手続き


40歳

介護保険料の徴収開始

60歳

雇用保険被保険者60歳到達時等賃金証明書をハローワーク等へ届出
高年齢雇用継続給付受給資格確認票などをハローワーク等へ届出
60歳以降、再雇用等による資格喪失・同日取得のための手続き

64歳

4月1日時点で64歳の者は、4月分以降の雇用保険料は不要

65歳

介護保険料の徴収終了
高年齢雇用継続給付の終了
65歳以降、老齢年金の受給要件を満たすことにより、被扶養配偶者は第3号被保険者資格の喪失(配偶者本人が手続きをする)

70歳

厚生年金保険被保険者の資格を喪失する。年金事務所・健保組合へ資格喪失の手続きを行う(健康保険料のみ継続して徴収する)
協会けんぽより健康保険高齢受給者証が交付される

75歳
健康保険の資格を喪失する。年金事務所・健保組合へ資格喪失手続きを行う。また、後期高齢者医療保険制度の被保険者となるため、市区町村へ届出を行う。

75歳到達による後期高齢者医療保険制度への移行手続き

ちなみに、75歳までは健康保険組合の対象ですが、75歳に到達すると健康保険組合から後期高齢者医療保険制度へ移行(75歳の誕生日当日に資格取得)することになります。

この際に、健康保険の被扶養者についても社会保険の対象から外れるため、削除の手続きをしておく必要があります。(その後、当該被扶養者の年齢により、国民健康保険組合への加入、後期高齢者医療保険制度への加入など、従業員側で手続きが必要となってきます)

届出先の注意点

厚生年金保険、健康保険については、年金事務所・健保組合を相手に届出等の手続きを実施することとなります。

健康保険の保険者が全国健康保険協会の場合には年金事務所に、保険者が健康保険組合の場合は同組合に提出をすることとなります。健康保険組合に資格取得届等の書類を提出する場合、組合から年金事務所に厚生年金保険の書類を回付してくれる場合と、回付されずにその後別途年金事務所に提出しなくてはならない場合があるため、留意が必要です。


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