知っておくべきフランスの所得税

皆さんはフランスの所得税の仕組みについて、ご存じでしょうか。なかなか海外の税制について知る機会は少ないと思いますが、フランスは世界的に見ても特徴的な仕組みを採用している国のひとつです。今回は、豆知識・教養としても知っておきたいフランスの所得税の仕組みについて紹介します。

フランスの所得税

日本国内に住んでいると、なかなか海外の税制について知る機会は少ないかと思います。税制の国際比較分析は税制改正の中では必ず参照されるテーマのひとつでもあり、OECD諸国と日本がどの程度の水準感にあるのかは熱心に議論される話題となっています。

特に、欧州圏ではイギリス、ドイツ、フランス、オランダ、スウェーデンなどが比較対象としてよく挙げられます。今回は欧州圏の中でも少々異なるフランスの所得税について、紹介します。

フランスの所得税率

まずは、フランスの所得税率について見ていきましょう。フランスの所得税の算定において、基礎控除(人的控除等)は後述する世帯単位課税により存在しないため、基本的には課税所得(年間収入から給与所得控除、必要経費を差し引いた後の金額)に対して所得税率が乗じられることとなります。

個人所得税は課税所得に応じ、累進課税方式で次の5段階に分かれる(一般税法典CGI 第197条)。

a. 課税所得が1万64ユーロ以下は非課税

b. 課税所得が1万64超~2万5,659ユーロ以下は11%

c. 課税所得が2万5,659超~7万3,369ユーロ以下は30%

d. 課税所得が7万3,369超~15万7,806ユーロ以下は41%

e. 課税所得が15万7,806ユーロを超える場合は45%

日本貿易支援機構(ジェトロ)ホームページ

1ユーロのレートにもよりますが、1ユーロ=130円とすると、

  • 課税所得 0~130万円 非課税
  • 課税所得 130万円~333万円 11%
  • 課税所得 333万円~954万円 30%
  • 課税所得 954万円~2,051万円 41%
  • 課税所得 2,051万円~ 45%

となります。円換算にしてもイマイチその大小がわかりづらいため、日本の所得税率と比較してみます。

日本の所得税率との比較

所得税率の大小で結論を付けることはできませんが、日本・フランスの課税所得の大小における税率比較を以下に記載します。

課税所得日本フランス
0~130万円5%非課税
130万円~195万円5%11%
195万円~330万円10%11%
330万円~333万円20%11%
333万円~695万円20%30%
695万円~900万円23%30%
900万円~954万円33%30%
954万円~1,800万円33%41%
1,800万円~2,051万円40%41%
2,051万円~4,000万円40%45%
4,000万円~45%45%

このように対比してみると、フランスは低所得者に対して税率を下げており、中間所得層~高所得者については日本より高い税率を課していることがわかります。

とはいえ、日本とフランスが大きく違うかというと、数%の税率の違いでしかなく、かなり近い水準の税率を採用していると言えるでしょう。

(参考)付加価値税は20%であり、消費に対する税率は高め

付加価値税(VAT)
1. 標準税率(20%):大半の工業製品、加工製品および一般サービスに適用
2. 軽減税率
 ・10%:未加工の農水産品、住居の改築工事、レストランなど一部のサービスなどに適用
 ・5.5%:食品、書籍、身体障害者用機器などに適用
3. 特別税率(2.1%):一部の医薬品などに適用

日本貿易支援機構(ジェトロ)ホームページ

所得税とは関係ありませんが、フランスの付加価値税、日本で言うところの消費税の税率はかなり高い水準にあります。通常のサービスに適用される税率が20%となっており、かなり高い率が適用されます。

軽減税率が適用されているとはいえ、かなり消費に対しての課税が大きくなっていることがわかります。

世帯単位課税(N分N乗課税)

フランスは世帯単位課税を採用しています。日本は個人単位課税を採用しており、日本の計算方法とは若干異なっています。

世帯単位課税の計算方法

世帯単位課税とは、課税所得を計算する際に、1世帯における人数を加味した上で、課税所得を計算する方法(N分N乗課税)となります。日本では個人単位課税が採用されており、あまりなじみがないかもしれませんが、以下のような算定式に基づいて所得税額が計算されることとなります。

$ \mbox{所得税率を算出する課税所得=1世帯全員の年間所得} \div \mbox{家族除数} $
$\mbox{所得税額=1世帯全員の年間所得} \times \mbox{所得税率} \times \mbox{家族除数}$

家族除数(N)の決定において、配偶者を有する場合には1が、扶養子女(原則として21歳未満)を有する場合には、子女一人につき0.5(3人目以降は1)が家族除数(N)に加算されます。

以下は各種税額控除等を加味しない数値となりますが、世帯単位課税のイメージとして記載しておきます。

具体例
$ \mbox{給与所得が4万ユーロの世帯である場合(配偶者の収入はゼロ)}$
$ \mbox{所得税率を算出する課税所得=4万ユーロ} \div \mbox{2人} = \mbox{2万ユーロ}$
$\mbox{所得税額=4万ユーロ} \times 11\% \times \mbox{2人} = 8,800\mbox{ユーロ} $

個人単位課税と世帯単位課税

世界各国でその税制は異なるのですが、個人単位課税と世帯単位課税(合算分割方式と合算非分割方式でさらに分かれます)のいずれかを適用することになります。

個人単位課税を採用する代表的な国として、イギリス、カナダ、スウェーデン、オランダなどが挙げられます。アジア圏であれば、日本や韓国も個人単位課税を採用する国のひとつです。

一方で、世帯単位課税を採用する国は少なく、フランス、ルクセンブルク(夫婦での単位)、ポルトガル(家族)などが挙げられます。2分2乗課税を採用する国は複数ありますが、フランスのようにN分N乗課税を採用する国は、ほとんどありません。

個人単位課税と世帯単位課税の選択方式としているのが、アメリカ、ドイツ、スペインなどです。スペイン、ノルウェーなどは世帯単位課税でも、合算非分割方式で税額を算出する仕組みを採用しています。

個人単位課税と世帯単位課税のどちらにもメリット、デメリットが存在しており、どちらの仕組みが優れているというわけではありません。所得税以外の各種税控除、補助金などの支援制度、社会保障費も含めたトータルで考慮せずに、税制の在り方を述べることは非常に難しい点は留意しておくべきでしょう。

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