新に被扶養者を追加する場合など扶養異動の手続きをまとめてみる

新たに従業員を採用した場合や家族が増えた場合など、扶養の対象が増える際には、人事上で色々な手続きが必要です。大きなポイントとして、健康保険と国民年金の手続きが必要となってくるため、それぞれにおける手続き内容や対象範囲などについて確認をしてみます。

健康保険の手続き

被扶養者の異動届

従業員がその家族等を被扶養者とする場合、年金事務所(または健康保険組合)に、「健康保険 被扶養者(異動)届」を提出することになります。当該手続きは被扶養者の異動(増減)があった日から原則5日以内に行う必要があります。

また、従業員が健康保険の資格取得と同時に家族を被扶養者とする手続きを行う場合は、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格届」と同時に提出することになります。

一部の健康保険組合では、扶養異動手続きの届出が遅れた場合、届出を行った日が認定日とされてしまう場合があります。その他手続き上の関係で、認定日を別途独自ルールで決めているケースもあり、実態は各健康保険組合でバラツキがあるのが実情です。なお、厚生労働省からは、「扶養事由発生日から6日以上経過して書類が到着した場合の認定日は、健康保険組合の書類受付日とする」旨の指導がなされています。

被扶養者の「範囲」

被扶養者にできる方の範囲についてですが、家族であれば誰でも被扶養者になれるわけではありません。被扶養者の認定の要件があり、以下の条件に合致する必要があります。

  • 被保険者と同居が要件にならない者:
    • 父母
    • 祖父母等の直系尊属
    • 配偶者(内縁含む)
    • 子(養子含む)
    • 兄弟姉妹
      (2016年10月1日より兄姉の同居要件が廃止になりました)
  • 被保険者と同居が要件になる者:
    • 上記以外の3親等内の親族
    • 内縁関係の配偶者の父母および子
    • 内縁関係の配偶者の死後の当該配偶者の父母および子

なお、上記の要件を満たすことに加えて、日本国内に住所を有している者である必要があります(2020年4月1日より認定基準に追加)。

※1 日本国内に住所を有している者のうち、日本国籍を有しておらず「特定活動(医療目的)」「特定活動(長期観光)」で滞在する方については被扶養者の対象とはなりません。
※2 日本国内に住所を有していない方でも特例的に被扶養者に認定される場合があります(「健康保険法等の一部改正に伴う国内居住要件の追加」を参照)。

被扶養者を証する書類

大別して4つの書類を用意する必要があります。

  1. 続柄確認のための書類
  2. 収入要件確認のための書類
  3. (該当する場合)仕送りの事実と仕送り額の確認のための書類
  4. (該当する場合)内縁関係を確認のための書類

その1 続柄確認のための書類

以下の2つの条件に合致する場合には、原則として添付書類は不要となります。

  • 被保険者(従業員)と扶養認定を受ける方(家族等)双方のマイナンバーが前述した届書に記載されている場合
  • 上記書類により、扶養認定を受ける方(家族等)の続柄が届書の記載と相違ないことを確認した旨を、事業主が届書に記載している場合

上記の要件に該当しない方については、以下に記載する添付書類が必要になります。

  • 被扶養者の戸籍謄本または戸籍抄本(被保険者との続柄がわかるもの)
  • 住民票の写し(コピー不可・個人番号の記載のないもの)

※被保険者と扶養認定を受ける方が同居していて、被保険者が世帯主である場合に限ります。

その2 収入要件確認のための書類

被扶養者となる方の属性により、必要書類が異なってきます。

① 所得税法の規定による控除対象配偶者または扶養親族となっている方

この場合、事業主の証明があれば添付書類は不要となります。

② ①以外の方
  • 退職したことにより収入要件を満たす場合:
    「雇用保険被保険者離職票の写し」または「退職証明書」
  • 雇用保険失業給付の受給者または受給終了により収入要件を満たす場合:
    「雇用保険受給資格者証の写し」
  • 年金受給者を扶養に入れる場合:
    現在の年金受給額がわかる「年金額の改定通知書等の写し」
  • 自営業(農業党含む)、不動産等による収入がある場合:
    「直近の確定申告書の写し」
  • 上記以外の収入がある方を扶養に入れる場合:
    収入額がわかる書類および市区町村が発行する「課税(非課税)証明書」
  • 上記以外の収入がない方を扶養に入れる場合:
    市区町村が発行する「課税(非課税)証明書」
③ ①および②の方に共通する事項

障害年金、遺族年金、傷病手当金、出産手当金、失業給付等の非課税対象と
なる収入がある場合は、別途、「受取金額のわかる通知書等のコピー」が
必要となります。

※16歳未満は、上記の添付書類は不要です。

その3 (該当する場合)仕送りの事実と仕送り額の確認のための書類

被保険者と別居している被扶養者が対象となります。その場合、

  • 振込の場合「預金通帳等の写し」
  • 送金の場合「現金書留の控え(写し)」

※16歳未満又は 16歳以上の学生は、上記の添付書類は不要です。

その4 (該当する場合)内縁関係を確認のための書類

以下の書類が必要となります。

  • 「内縁関係にある両人の戸籍謄(抄)本」
  • 「被保険者の世帯全員の住民票(コピー不可・個人番号の記載がないもの)」等

被扶養者の「収入要件」

収入要件は、年間収入130万円未満(60歳以上または障害厚生年金を受給できる程度の障害を有する方の場合は、年間収入180万円未満)であり、なおかつ以下のいずれかを満たすことが必要です。

  • 同居の場合:年間収入が被保険者(従業員本人)の年間収入の半分未満
  • 別居の場合:年間収入が被保険者(扶養者である従業員本人)からの仕送り額未満

同居の場合において、年間収入が被保険者の年間収入の半分より多い場合であっても被保険者(従業員本人)の年間収入より少なければ、日本年金機構が当該世帯の家計の状況を総合考慮して認められる場合もあります。

また、被扶養者の年間収入が増えて、収入要件を満たさなくなった場合には、被扶養者から外れることになります。その際、 「被扶養者 (異動) 届(削除)」の手続きが必要となります。

※1 年間収入とは、過去における収入ではなく、扶養に該当する時点及び、認定された日以降の年間の見込みの収入額を指します。(給与所得等の収入がある場合、月額 108,333 円以下、雇用保険等の受給者の場合、日額 3,611 円以下)
※2 被扶養者の年間収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます。
※3 雇用保険の待機期間中でも、収入要件を満たしている場合は被扶養者とし認定することが可能です。ただし、基本手当(3,612 円以上)の支給が始まった場合は、扶養削除の届出が必要となります。

国民年金の手続き

国民年金の被保険者

国民年金には3種類の被保険者種別があり、以下のように区分されています。

  • 第1号被保険者:第2号・第3号被保険者以外の者で、日本国内に住む20歳以上60歳未満の者
  • 第2号被保険者:厚生年金保険の加入者(70歳未満)
    なお、65歳以上の被保険者で、老齢基礎・厚生年金、退職共済年金などの受給権がある人は対象外。
  • 第3号被保険者:第2号被保険者の被扶養配偶者で、20歳以上60歳未満の者

第2号・第3号被保険者の国民年金保険料は、国民年金保険料としての個別負担はありません。国の年金特別会計上、厚生年金保険料は一時的に厚生年金勘定として納められますが、厚生年金勘定から基礎年金勘定へ基礎年金拠出金が繰り入れられる仕組みとなっています。

「国民年金第3号被保険者関係届」の手続き

厚生年金に加入している従業員(原則65歳未満)に扶養される20歳以上60歳未満の被扶養配偶者は、国民年金の「第3号被保険者」に該当します。

健康保険被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」にて手続きを行うこととなりますが、以下の条件に該当する場合のみ用いることになります。

  • 配偶者の健康保険が以下の場合で扶養の異動があったとき
    1. 健康保険組合
    2. 国民健康保険組合
    3. 国家公務員共済組合
    4. 地方公務員等共済組合
    5. 日本私立学校振興・共済事業団
  • 被扶養配偶者の届出事項に変更があったとき(以下のようなケース)
    1. 氏名等に変更がある
    2. 生年月日や氏名に誤りを訂正するとき
      (上記の健康保険組合等の場合)
  • 健康保険の扶養手続きと同時でないとき(以下のようなケース)
    1. すでに健康保険の被扶養者であった20歳未満の配偶者が20歳に到達した場合
    2. 健康保険の扶養手続きの際の手続き漏れである場合

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