【ネタバレなし】君の名は。新海誠監督の過去作品についてまとめてみた

映画『君の名は。』の快進撃が止まらない。歴代の興行成績を塗り替え、さらにその記録を伸ばし続けている。この映画の監督は、『秒速5センチメートル』を制作した新海誠氏。彼の映画作品は、観る者の心に訴える繊細さが溢れており、過去作品含めてお勧めしたいものが多い。今回は新海誠氏の過去作品について、あらすじと共にまとめてみる。

2002年 ほしのこえ

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 2039年、火星に向かった有人探査チームは、タルシス台地のクレーター中に異文明の遺跡を発見するが、突如出現した異生命体に全滅させられてしまう。が、一方でその遺跡から発見された数々のテクノロジーにより、人類の科学水準は一気に半世紀以上の飛躍を遂げる。さらに、太陽系外縁には異生命体(タルシス台地にちなんで「タルシアン」と呼称される)の遺跡と推測されるワープポイント、通称ショートカット・アンカーが発見され、人類は恒星間航行への手段も手に入れることとなった。

その後、いずこかへ去ったタルシアン調査のために国連宇宙軍戦艦リシテア、レダ、ヒマリア、エララの4隻が建造され、2047年には1000名以上の選抜メンバーによる調査団が組織される。

関東某県の中学に通う長峰美加子と寺尾昇は同級生。同じ部活で仲の良いふたりだが、中学3年の夏、ミカコは国連軍の選抜メンバーに選ばれたことをノボルに告げる。翌年2047年冬、ミカコは地球を後にし、ノボルは高校に進学する。

地上と宇宙に離れたミカコとノボルは携帯メールで連絡をとりあうが、リシテア号が木星・エウロパ基地を経由して更に太陽系の深淵に向かうにつれて、メールの電波の往復にかかる時間は開いていく。ノボルはミカコからのメールだけを心待ちにしている自身に苛立ちつつも、日常生活を送っていく。やがてリシテア艦隊はワープを行い、ミカコとノボルの時間のズレは決定的なものへとなっていく…… (『ほしのこえ』公式サイトより)

新海誠氏の名前が大きく有名になったのが、この『ほしのこえ』であることは間違いないだろう。この作品は2002年に劇場公開され、監督・脚本・演出・作画・美術・編集など、ほとんどの作業を新海一人で行ったと言われている。

約25分のショートムービーで、現在のような綺麗なアニメーションではないが、新海誠ワールドが存分に入ったものとなっている。「心のすれ違い」「時間の儚さ」、観た後のなんとも言えない様々なことが頭に巡るこの感覚は、この作品の良さでもあり、深みとも言えるのではないだろうか。設定に無理がある点や人物画の違和感等批判される点はもちろんある。映画をどう捉えるかはあくまで鑑賞者の自由である点を踏まえると、当時の技術の古さは置いといて、個人的にお勧めしたい心に響く作品の一つと言える。

なお、『ほしのこえ』は、第1回新世紀東京国際アニメフェア21「公募部門優秀賞」、第7回アニメーション神戸「パッケージ部門賞」、第6回文化庁メディア芸術祭「デジタルアート部門特別賞」、第34回星雲賞 メディア部門・第8回AMD AWARD BestDirector賞等の賞を受賞している。

2004年 雲のむこう、約束の場所

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 日本が南北に分断された、もう一つの戦後の世界。米軍統治下の青森の少年・藤沢ヒロキと白川タクヤは、同級生の沢渡サユリに憧れていた。彼らの瞳が見つめる先は彼女と、そしてもうひとつ。津軽海峡を走る国境線の向こう側、ユニオン占領下の北海道に建設された、謎の巨大な「塔」。いつか自分たちの力であの「塔」まで飛ぼうと、小型飛行機を組み立てる二人。

だが中学三年の夏、サユリは突然、東京に転校してしまう…。言いようのない虚脱感の中で、うやむやのうちに飛行機作りも投げ出され、ヒロキは東京の高校へ、タクヤは青森の高校へとそれぞれ別の道を歩き始める。

三年後、ヒロキは偶然、サユリがあの夏からずっと原因不明の病により、眠り続けたままなのだということを知る。サユリを永遠の眠りから救おうと決意し、タクヤに協力を求めるヒロキ。そして眠り姫の目を覚まそうとする二人の騎士は、思いもかけず「塔」とこの世界の秘密に近づいていくことになる。

「サユリを救うのか、それとも世界を救うのか」

はたして彼らは、いつかの放課後に交わした約束の場所に立つことができるのか…。(『雲のむこう、約束の場所』公式サイトより)

2004年に公開された作品である「雲のむこう、約束の場所」。前作『ほしのこえ』から映像技術はだいぶパワーアップしており、今でも遜色ないクオリティを持っていると言っても過言ではないだろう。ただ、一方で脚本の作り方、設定のリアリティには若干万人受けしないとも言える展開がいくつか見られる。前作と同様に個性が強い作品とも言えるため、人を選ぶほどではないが、多少の意見は分かれる作品ではないだろうか。

なお、こちらの作品では、第59回毎日映画コンクールアニメーション映画賞、東京国際アニメフェア2003「表現技術賞(パイロット版)」、カナダファンタジア映画祭「アニメーション映画部門銀賞」、第36回星雲賞アート部門、韓国SICAF2005「長編映画部門優秀賞」を受賞している。

2007年 秒速5センチメートル

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 小学校の卒業と同時に離ればなれになった遠野貴樹と篠原明里。二人だけの間に存在していた特別な想いをよそに、時だけが過ぎていった。

そんなある日、大雪の降るなか、ついに貴樹は明里に会いに行く……。

貴樹と明里の再会の日を描いた「桜花抄」、その後の貴樹を別の人物の視点から描いた「コスモナウト」、そして彼らの魂の彷徨(ほうこう)を切り取った表題作「秒速5センチメートル」。3本の連作アニメーション作品。(『秒速5センチメートル』公式サイトより)

2007年に公開された『秒速5センチメートル』、当時は半年に及ぶロングランを記録した。当該作品は、アジア太平洋映画祭「アニメーション映画賞」、イタリア フューチャーフィルム映画祭 「ランチア・プラチナグランプリ」(最高賞)等を受賞している。

説明不要と言っていいほど、繊細かつ全てを語る映像美。儚い思いがストーリー全体を包み込んでおり、悲しい印象を与えるが、日常的な風景が鑑賞者の心を掴む数少ない映像作品と言える。相変わらず登場人物の細かい行動等には疑問が残る点が指摘されているが、音楽とこの作品全体が表現するものを感じとると、他の映画にはない後味を堪能できるはずだ。好き嫌い含めて、一度は観ることをお勧めする作品。

2011年 星を追う子ども

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 山間部の小さな町で生まれ育ったアスナは幼少期に父を亡くしてから母と二人で暮らしていた。時折、父が遺した形見の石と共に、自身の秘密基地で過ごすなど平凡に過ごしていると、ある時に不思議な唄を耳にする。どこか懐かしく、かと言って聞き覚えのないその唄を忘れられなかったアスナの目の前に、シュンという少年が現れる。地下世界、アガルタと呼ばれる場所からやってきたシュンと邂逅するアスナ、やがて2人は心を通わせていき、アスナはほのかな恋心を、シュンは地上の素晴らしさを知っていった。

けれど穏やかな時間は長く続かなかった、また会おうと言って別れたその数日後、シュンの死体が発見されたのだ。どうしていきなりと、シュンの死を受け入れられず、ただ悲嘆にくれるアスナ。出来るのであれば、もう一度シュンに会いたいという思いが強くなる中で、シュンと瓜二つな顔をしたシンという少年が現れる。彼はシュンが持ちだしたアガルタへと通じる鍵であるクラヴィスを回収するため、アスナの前に現れる。

だがそこへ武装した集団と、アスナの担任である森崎が出現しアスナたちに攻撃を仕掛けた。やがてシンは無事クラヴィスの回収に成功すると、アガルタへなんとか帰還する。そこへ森崎達も駆けつけて地下世界への入り口を発見するが、森崎は突如として部隊を裏切るのだった。彼の目的はアガルタへ赴き、あるとされる死者を蘇らせる手段を行使して亡き妻リサとの再会を望んでいたのだ。森崎の真意を知ったアスナ、自身もアガルタについて調べている中で一度死んだ人間を生き返らせられる方法があると知り、森崎に付いていくことを決める。同行者として、猫のような生物であるミミも引き連れて、アスナはシュンと、森崎はリサともう一度会うために未知なる世界であるアガルタを目指すのだった。(『星を追う子ども』公式サイトより)

『星を追う子ども』は2011年の作品。これまでの作品とガラッと雰囲気が変わり、一見ジブリ作品のような印象を与える作画となっている。舞台設定についてもファンタジー要素が多く盛り込まれており、新海作品の別の表現方法を味わうことができる。

ネット上では、ジブリ作品のオマージュならぬ模倣品と揶揄されるコメントが散見される。この意見には同意する部分もあるし、表現としての形として捉えることもできる、と個人的には感じる。

なお、こちらの作品も第八回中国国際動漫節「金猴賞」優秀賞、第34回アヌシー国際アニメーション映画祭長編コンペティション部門ラインナップ選出等、様々な賞を受賞している。

2013年 言の葉の庭

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 靴職人を目指す高校生・タカオは、雨の朝は決まって学校をさぼり、公園の日本庭園で靴のスケッチを描いていた。ある日、タカオは、ひとり缶ビールを飲む謎めいた年上の女性・ユキノと出会う。ふたりは約束もないまま雨の日だけの逢瀬を重ねるようになり、次第に心を通わせていく。居場所を見失ってしまったというユキノに、彼女がもっと歩きたくなるような靴を作りたいと願うタカオ。六月の空のように物憂げに揺れ動く、互いの思いをよそに梅雨は明けようとしていた。(『言の葉の庭』公式サイトより)

2013年に発表された『言の葉の庭』。46分という短い作品ではあるが、秒速5センチメートルに続く映像美は健在で、その1カットそれぞれに目を見張るものがある。各々エピソードに込められた言葉の深み、そして空虚と虚しさ。届かぬ想いがより一層この作品のメッセージを深めている。

一方で、やや大人向けの内容という意見や、意味がわからないと退屈な非現実的なストーリー、といった批判的な内容もある。賛否両論ある作品であるのは、確かな模様。

こちらの作品は、カナダ・モントリオール ファンタジア映画祭「今敏賞」、劇場アニメーション部門「観客賞」、第18回アニメーション神戸賞「作品賞・劇場部門」、iTunes Store 「iTunes Best of 2013“今年のベストアニメーション”」 選出、ドイツ シュトゥットガルト国際アニメーション映画祭「ITFS」長編映画部門「最優秀賞」。

2016年 君の名は。

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 千年ぶりとなる彗星の来訪を一か月後に控えた日本。山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉は憂鬱な毎日を過ごしていた。町長である父の選挙運動に、家系の神社の古き風習。小さく狭い町で、周囲の目が余計に気になる年頃だけに、都会への憧れを強くするばかり。

「来世は東京のイケメン男子にしてくださーい!!!」

そんなある日、自分が男の子になる夢を見る。見覚えのない部屋、見知らぬ友人、目の前に広がるのは東京の街並み。念願だった都会での生活を思いっきり満喫する三葉。一方、東京で暮らす男子高校生、瀧も、奇妙な夢を見た。行ったこともない山奥の町で、自分が女子高校生になっているのだ。繰り返される不思議な夢。そして、明らかに抜け落ちている、記憶と時間。二人は気付く。

「私/俺たち、入れ替わってる!?」

いく度も入れ替わる身体とその生活に戸惑いながらも、現実を少しずつ受け止める瀧と三葉。残されたお互いのメモを通して、時にケンカし、時に相手の人生を楽しみながら、状況を乗り切っていく。しかし、気持ちが打ち解けてきた矢先、突然入れ替わりが途切れてしまう。入れ替わりながら、同時に自分たちが特別に繋がっていたことに気付いた瀧は、三葉に会いに行こうと決心する。

「まだ会ったことのない君を、これから俺は探しに行く。」

辿り着いた先には、意外な真実が待ち受けていた……。

出会うことのない二人の出逢い。運命の歯車が、いま動き出す
(映画『君の名は。』公式サイトより)

2016年8月より公開されている『君の名は。』。興行収入209億円を超え、韓国、中国等のアジア圏でも爆発的な人気となっている。『小説・君の名は。』についても、100万部を突破し”君の名は。”一大ブームが2017年も続いている。

この映画の評価・レビューはすでに多数の人がネット上でも公開しているが、個人的な観点でも観ておくべき作品の一つと言っていいのではないだろうか。ストーリーそのものの面白さ、音楽と映像美が奏でる儚さ、最終幕までの展開の作り。どれを取っても、鑑賞者はこの世界観に惹きこまれると思われる。

すべての人を感動させる映画作品というものは、まず存在しない。むしろ感動を生む作品に出会えないことの方が多いのが現実だ。にも関わらず、”君の名は。”が多くの人を感動させる映画として評価されているのも事実だ。もしまだ観ていないのであれば、ぜひ映画館に足を運んでみる価値はあるだろう。例え、期待外れであったとしても、多くの人の期待に応えることは間違いない。

すでに、第49回シッチェス・カタロニア国際映画祭 アニメ作品部門「最優秀長編作品賞」、第60回BFIロンドン映画祭「Official Competition」ノミネート、第18回プチョン国際アニメーション映画祭「長編コンペティション部門 優秀賞・観客賞」、ニュータイプアニメアワード「2015-2016 作品賞(劇場上映部門) 1位」、第42回ロサンゼルス映画批評家協会「長編アニメーション賞」、第29回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞 監督賞等の様々な受賞歴がある。

まとめ:君の名は。賛否両論あれどまず観てみよう

かなりアゲアゲに評価文を記載してしまったが、賛否両論あるのは事実。その傾向は過去作品も同様で、映像美と音楽とは裏腹に、設定の強引さは矛盾について気に掛かってしまう人もきっといるだろう。

半年を超えるロングラン。好き嫌いを超えて、一度は観てみるだけの価値はきっとあるはず。もしイマイチと思えば、観た後で存分に批評するのがきっといいだろう。それは、逆に大ヒット作の宿命でもある。ご参考まで。

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