老後に年金はいったいいくらもらえるのか ~具体的な年金額~

年金分野で仕事をしていると、プライベートで「老後の年金はいくらもらえるの?」といった質問は年中受ける。日本の年金制度は難解で加入者が理解をするにはあまりにも難しいのが現状であるが、永遠のホットトピックとして簡単に紹介したいと思う(個人的な感覚では、日本の年金制度が突出して難解だとは思っておらず、欧州諸国の年金制度やアジア・米国の年金制度も同様に難解だという印象はあるので、年金の世界はいつも難しいのは変わりない笑)。

なお、以下に記載する年金額等の数値は平成28年3月を基準としている。物価や賃金の上昇等に応じてその金額は毎年変化するので留意されたし。

日本の年金制度は3階建

定額部分の基礎年金部分、サラリーマンの場合は報酬比例部分がさらに支給される

日本の年金制度は3階建と称されており、1階部分である基礎年金部分、2階部分である報酬比例部分(以下の図でいうところの”厚生年金保険”が該当)、3階部分に企業年金や個人型DC(確定拠出年金)が該当する。

被保険者の適用区分により対象となる制度が異なっているのが特徴だ。自営業者や学生等は第1号被保険者として区分され、現役時代は国民年金制度に加入して、引退後は”老齢基礎年金”を受給することができる。

また、サラリーマンは第2号被保険者として区分され、厚生年金保険制度に加入することとなる。引退後は”老齢基礎年金”と”老齢厚生年金(報酬比例部分)”を受給することができる。なお、保険料等は厚生年金保険適用事業所(すなわち会社)を通じて支払われ、その保険料の半分を事業主が、残りの半分は加入者が負担することとなっている。

最後に、サラリーマンの扶養家族(専業主婦・主夫)は第3号被保険者に区分される。引退という表現が合っているかはわからないが、引退後の老後では”老齢基礎年金”を受給することができる。なお、第3号被保険者は保険料を負担していない。扶養者である第2号被保険者が負担している訳でもない。しかし、給付の財源は厚生年金保険が負担する仕組みとなっている。
(あくまで被扶養者が厚生年金に加入していることが前提)
20160328年金.png
出所:厚生労働省HP

老齢基礎年金の年金額は、満額780,100円

日本の年金制度について、”公的年金”と言うと世間一般では”国民年金制度”のことを指す場合が多い。もちろん厚生年金の報酬比例部分も含めて公的年金と表現するメディアも多いため、明確な切り分けがされているわけではない。だが、日本国内の20歳以上60歳未満の者はこの国民年金制度に加入することになるため、ほぼ全員に共通する国民年金制度の給付額(老齢基礎年金の年金額)がマスコミの焦点となることが多い。

自営業者等が中心である第1号被保険者、サラリーマンのような厚生年金保険の被保険者である第2号被保険者、第2号被保険者の扶養家族である第3号被保険者(専業主婦等)のいずれもが、この”老齢基礎年金”を受け取れる権利がある。国民年金からは障害給付や遺族給付などもあるが、多くの人がもらうこととなるのが、老齢給付である”老齢基礎年金”だろう。

老齢基礎年金は通常、保険料納付済期間(保険料免除期間含む)が10年以上である者が65歳に達したときに支給される。20歳から60歳に達するまでの40年納付をした場合には、満額の780,100円(年額)が死ぬまで支給される。

保険料免除月数などで細かく算定式は異なってくるが、大まかに言えば

年金年額 = 780,100円 × (保険料納付済期間/480ヶ月)

という算定式で算出されることになる。つまり保険料を納付した分だけ年金額が増えるため、この算定式を見る限り所得再分配の機能はない。だが、国民年金の財源のうち2分の1は国庫(消費税等)で負担されているため、実質国民全員で負担しているのが現状だ。

老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額は、平均749,801円

厚生年金保険適用事業所に勤めている加入者、ざっくりいうとサラリーマンは”老齢厚生年金”を将来受給することができる。現在(平成28年3月)の保険料は17.829%となっている。

なお、この保険料は労使折半なので実際に給与から天引きされている金額は8.914%となっている。厚生年金保険料は平成29年までに18.30%へ段階的に引き上げられることがすでに10年以上前から決定されているので、賃金が上昇していないのに何で国は保険料を上げるんだ!と今さらメディアが騒ぐのはいささか見当違いだろう。

ざっくりした数字で考えると、標準報酬月額が300千円の場合には月々の保険料は27,460円(本人負担分)となる。大学を卒業後、定年60歳まで38年加入した場合の拠出総額はおよそ12,517,200円となる。もちろん本人の給与水準により保険料は変動することとなるため、あくまで目安の水準となる。

さて、老齢厚生年金の給付額の計算式は以下のとおり。

老齢高年金の給付額 =

① 平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × H15.3月までの期間

+② 平均標準報酬月額 × 5.481/1000 × H15.4月からの期間

若干わかりづらいと思うかもしれないが、”平均給与比例方式”の年金制度となっており平均給与が上がれば上がるほど、高い年金額を受け取ることができる。この計算式に当てはめると、平均標準報酬月額が300千円(35歳未満の人をモデル)の場合には、

老齢厚生年金=満額749,801円(年額)

となる。この金額を現在の法令上では65歳から受け取ることができるだろう。なお、老齢厚生年金の財源は保険料と積立金の運用収入でほぼすべて賄っており、国庫負担はないとされている。段階保険料方式を採用したことによる積立金の存在や事業主負担によって将来受け取る年金額の半分が賄われているという点が大きいのだろう。

結局、全部でいくらもらえるのか(現在の年金受給世代)

現在の高齢者は経過措置が適用されているという点もあり、高齢者は若者世代よりも高い給付水準で年金を受け取っていることは間違いない。あくまで40年間年金制度に加入し続けていたという前提(平均標準報酬月額300千円モデル)で話を進めるならば、

<第1号被保険者:自営業者等>

老齢基礎年金 = 約78万円(年額) ⇒ 65,000円(月額)

<第2号被保険者:サラリーマン等>

老齢基礎年金+老齢厚生年金 = 約150万円(年額) ⇒ 125,000円(月額)

<第3号被保険者:専業主婦等>

老齢基礎年金 = 約78万円(年額) ⇒ 65,000円(月額)
(夫婦の場合、扶養家族の分も合わせて190,000円(月額)

となる。基本的にこれとは別に退職金や国民年金基金、年金保険等での積立、個人の貯蓄が老後生活費の源泉になる。

高いと思うか低いと思うかは個々人で異なるだろうが、別途収入がない限り都内に住むのは厳しいかもしれない。ましてやこの金額が終身(死ぬまで)でもらえるというわけではなく、マクロ経済スライドにより給付水準は徐々に引き下げられる点も考慮しないといけない。

結局、全部でいくらもらえるのか(将来の年金受給世代)

さて、既に引退した受給者世代の話は上記のとおりであったが、現在バリバリに働いている20代、30代の場合はどうだろうか。

彼らが年金を受け取るのは30年後、40年後の話であり、将来の日本経済がどうなるのかで事情は大きく異なるだろう。ただ、国の数字を信じるのであれば、昨年の財政検証においても所得代替率50%は少なくとも確保することが宣言されている(仮に50%を確保できない場合には「給付及び負担の在り方について検討を行うこと」とされている)。

将来の厚生年金・国民年金の財政見通し

所得代替率50%とした場合には、老齢基礎年金は62万円(年額)、老齢厚生年金は58万円(年額)となる。老齢基礎年金と老齢厚生年金を合計すると、その額は120万円(月額10万円)となり、将来世代の年金額は一段と寂しいものとなってしまう。
※現在の所得代替率の水準を64.1%(平成26年度の水準)と仮定

細かい前提条件や寡婦年金、遺族給付など諸々の話はすべて割愛して進めてしまったが、ざっくりとした老齢年金の内容は上記のとおりである(と推測される)。少しでも参考になればと思うが、自分で読んでいてもわかりづらいと感じる文章だ笑。

将来の日本国民の所得水準が低下した場合はどうなるのか

この20年間の間にほとんど日本の所得水準は上昇しておらず、むしろ若者世代の所得水準は昔に比べ減少していることが指摘されている。

国に制作では先にも述べたとおり、所得代替率50%を最低保障の水準として給付額の水準を維持することを宣言している。だが、そもそもの日本国民の所得水準が10%、20%下がった場合はどうなるだろうか。

はっきり書かせてもらうが、将来所得水準が減少するようなケースは一般的に経済が縮小又は崩壊するケースに該当する場合が多い(ただし、数%の減少程度であれば、現役世代と引退世代等の間で格差が広がり現役世代の所得水準が低下するような場合も考えられる)

経済が縮小、崩壊するようなケースでは、年金制度の維持はもちろん経済が破綻に近い状態となっているため、まともな社会保障を国の制度として維持していくことが難しいのは想像に易いだろう。
(経済縮小状態でも、社会保障制度を維持すべきであれば、更なる社会保険料を上乗せせざるを得なくなる)

あくまで主観的な意見ではあるが、年金制度は日本経済と密接に結びついており、年金制度の維持・健全な運営に必要なことは年金制度の安易な変更などではなく、そもそもの日本経済の発展・成長が不可欠であることは間違いないと考えている。

必ず知っておきたい日本の年金制度全体図
たしか2013年の厚生年金基金の解散を促す健全化法が成立したときに、ネットではこんなコメントが多く散見されたのを覚えている。「これから厚生年金なくなるの?」「今...
平成29年度の年金額はマイナス改定?それはなぜなのか、解説してみる
今年も厚生労働省から年金額改定率が公表された。これは公的年金の年金額を改定するもので、毎年発表されている。通常の経済環境では、物価変動によって年金額の水準を...

Pocket

2件のコメント

  1. 何回聞いても自分の年金額が分かりませんねえ・・結局、社会保険事務所や年金機構の事務所へ行って個別に聞くしかないのでしょうか・・・。こんな大事なことなのにいくらネットで調べても分かり易い説明がないですね、私の勉強不足ですが・・。

    1. 個人の年金額を調べたい場合には、日本年金機構のホームページにある「ねんきんネット」を利用することが確実かと思います。平日休めるかどうかにも拠りますが、年金事務所の土日窓口は開いていない場合もありますし、申請用紙や必要な諸情報や証明書を求められることもあります(結局、後日郵送になるんですが)。

      ただ、こちらの”ねんきんネット”も色々行政として工夫しているんでしょうが、いかんせん基礎年金番号(マイナンバーではないです)がないとアクセスキーを発行できなかったり、不便な現状と言わざるを得ません。おおまかな年金額を知りたい場合は、日本年金機構から年に一度送付される”ねんきん定期便”を見て、過去の加入記録と認識祖語がないか毎年確認するのが簡単かつ確実ですね。

      http://www.nenkin.go.jp/n_net/index.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です