確定拠出年金法の改正。その掴むべきポイントをまとめ!

確定拠出年金(以下、DCと記載)は、企業年金の一制度として、平成13年10月よりスタートした制度である。DC制度には「企業型年金」と「個人型年金」の2つの種類があり、税制優遇の恩恵を受けながら、老後所得を確保する手段として、その規模を拡大させてきた。

昨今の働き方の多様化、企業年金の普及・拡大を踏まえ、また老後に向けた個人の継続的な自助努力を支援するため、現在DC法改正案が通常国会に提出されている。今回はその内容について、紹介したい。

なお、昨年の通常国会でも同法案は提出されてはいたものの、衆議院を通過したが参議院で審議未了となってしまった(安保法案により国会審議時間が足らず翌年度へ先送りとなってしまった)。今後、参議院厚生労働委員会・本会議でともに可決されれば、衆議院に回ることになる。その後、衆議院厚生労働委員会・本会議でともに可決されれば、DC法改正案は成立する。

改正の趣旨

確定拠出年金が創設されてからすでに10年以上が経過しており、当時と今では個々人の働き方や経済環境などは大きく変化した。企業年金の仕組みとして、これまで以上に働き方の多様化等に対応し、企業年金の普及・拡大を図っていく必要がある。そして、老後に向けた個人の継続的な自助努力を支援するために、現在ある個人型DCの機能をより拡充させることが当該改正の目的となっている。

改正の主な内容

今回の改正は大きく以下の5項目に分類ができる。

・企業年金の普及・拡大
・個人型DCの加入可能範囲の拡大
・年金資産の持ち運び(ポータビリティ)の拡充
・DCの運用の改善
・その他の措置

それぞれについて簡単に見ていこう。

企業年金の普及・拡大

現在、厚生年金基金の解散を促す健全化法の施行の影響もあって、企業年金を有している企業は減少傾向にある。特に中小企業においては企業年金の普及が進んでおらず、将来的に公的年金の給付水準が下がっていくことを考慮すると、個々人による老後所得を確保することが一層重要になってくる。そのため、中小企業向けの施策として、「簡易型DC制度」の創設と「個人型DCへの小規模事業主掛金納付制度」が新たに創設される。

より詳細についてはこちらの記事を参考。
DC法改正解説その1(企業年金の普及・拡大)

中小企業向けの取り組み

従業員数100人以下の企業では、以下の制度を利用することができる。

・簡易型DC制度

設立時の書類を簡素化し、行政手続きを金融機関に委託できる仕組みとなっている。小規模事業主にとっては、企業年金や行政との手続き関連について詳しい従業員はほとんどいないため、よりDC制度への間口が広がったことになる。

・個人型DCへの小規模事業主掛金納付制度

個人型DCに加入している従業員に対し、事業主が追加で掛金拠出できるようになる。一般的に企業年金を有していない会社の場合、従業員は個人型DCの加入対象者となるが、現行は個人型DCに加入しても企業型DCのような会社が出してくれる掛金(事業主掛金という)が入ってくるわけではないため、あまり従業員にメリットが感じられていない(拠出時の税制優遇を除けば、使い勝手の悪いNISAのようなイメージ)。

今回の改正により事業主掛金が拠出されるようになれば、個人型DCの普及、中小零細企業への自助努力支援が加速化されることは間違いないだろう。海外では、DC制度の逆マッチング(加入者が掛金を拠出する場合に、事業主が掛金を拠出する仕組み)はすでに導入されており、加入者の老後所得確保を推進するよい仕組みとなっている。

DCの掛金単位の年単位化

これまでDC掛金は月単位とされており、拠出限度額を使いきれなかった場合には翌月に繰り越すことはできなかった。今回の改正により、拠出の規制単位が年単位へ変更される。年単位化されることにより、賞与支給時の一括拠出が可能になるなど、より事業主・加入者にとって利便性の高い仕組みとなる。

個人型DCの加入可能範囲の拡大

筆者が思うにこの改正項目が一番の目玉ではないだろうか。これまで、第1号被保険者や企業年金を有していない企業に勤める第2号被保険者のみが個人型DCに加入可能であった。今回の改正で、個人型DCについては第3号被保険者(いわゆる専業主婦・主夫)や企業年金加入者、公務員等共済加入者も加入可能となる。

サラリーマンであっても加入できるということなので、普段貯蓄している分の一部をこちらに回すということができる。個人型DCは掛金額が所得控除の恩恵を受けることができるため、年収の高い人ほど嬉しい話なのではないだろうか。

詳しくはこちらの記事も参考。
DC法改正解説その2(個人型DCの加入可能範囲の拡大)

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(出所:厚生労働省HP)



年金資産の持ち運び(ポータビリティ)の拡充

企業年金のある会社から企業年金のある会社へ転職する場合など、年金制度の資産を持ち運ぶことをポータビリティと呼んでいる。今までDC制度では、DB制度への資産の持ち込みや中小企業退職金共済から資産の受け入れはできなかった。だが、これらのポータビリティについても今回の改正で大きく改善されこととなる。

中退共の仕組みについては、こちらの記事で解説。
日本の年金制度シリーズ① ~中小企業退職金共済制度~

DCの運用の改善

企業型DCでは、加入者が自ら運用商品を選んで運用していく制度であるが、これまで継続投資教育がおろそかにされる傾向があることや、運用商品を増やすことはできても減らすことは(実質的に)非常に難しい仕組みであったこと等について改善を以下のように盛り込んでいる。

ア)継続投資教育の努力義務化
イ)運用商品の提供数の抑制
ウ)運用商品の除外要件の緩和
エ)運用商品の提供義務の改正
オ)指定運用方法に係る規程の整備

改正案に関する詳細についてはこちらの記事で解説!
DC法改正解説その3(DCの運用の改善)

その他の措置

現行制度の改善事項として、企業年金の手続き簡素化や個人型DCの加入可能範囲の拡大に伴い国民年金基金連合会が行う業務に「啓発活動及び広報活動を行う事業」を追加される。

まとめ:個人型DCの範囲拡大が何より嬉しい

昨年は成立するか!と期待はしていたものの、安保法案で9月はどんどんと押し流されていったのがまだ記憶に新しい。今年はどうなるかと巷では囁かれており、夏の参議院の選挙や国会の審議順がやや気になっていたところではあった。ただ、今月早くも審議入りということで、概ね問題なく進むのではないだろうか(とあくまで予想)。

やはり今回の改正は、個人型DCの範囲拡大はほとんどの人に影響ある話で、新しい財テクの誕生とも言える。厚生労働省と財務省がどんなネゴシエーションをしたのか、というのは気になりつつも、詳細が確定するのを待ちたいと思う。

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企業のための確定拠出年金 [ みずほフィナンシャルグループ確定拠出年金 ]

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