日本の年金制度シリーズ③(国民年金基金)

国民年金基金という年金制度はご存じだろうか。国民年金基金は自営業者などの第1号被保険者が公的年金に上乗せして受け取れる年金制度の一つとなっており、終身年金を受け取れる上に税制優遇も受け取れるというメリットの大きい制度だ。

今回は、メリットはあるのにあまり知られていない国民年金基金を紹介する。

国民年金基金ってそもそも何?

国民年金基金は、自営業者のための年金制度であり、公的年金とは別に年金額を上乗せできる年金制度だ。

そもそも自営業者等が属する第1号被保険者は、厚生年金(年金制度の2階部分)に加入することができない。一方で、サラリーマンは厚生年金保険に加入できるため、国民年金とは別に厚生年金から年金額が支給される。そのため、老後になったときにサラリーマンであった者と年金額の差(所得格差)が生まれてきてしまう。「この所得格差はよくないよね!」「解消しなきゃだめだよね!」ということで、国民年金(老齢基礎年金)の上乗せ給付を行うことを目的とした国民年金基金という制度が創設された。

なお、国民年金基金制度そのものは昭和44年に導入されたが、設立要件が厳しく、実際には基金は設立されなかった。平成元年の法改正により、自営業者等の老後生活に対する多様なニーズに応えるための整備が行われ、平成3年5月より順次、基金が設立されている。

国民年金基金は、厚生労働大臣に認可を受けた公的な法人で、全国の47都道府県で設立された地域型国民年金基金と25の職種別に設立された職能型国民年金基金の2種類がある。それぞれの基金が行う事業内容は同じであり、加入する場合は地域型と職能型のいずれか一つの基金にしか加入できない。

国民年金基金には「地域型」と「職能型」の2種類がある

国民年金基金には、「地域型」と「職能型」の2種類があり、設立形態によって種類が異なってくる。種類は違っても、基金が行う事業内容は同じだ。加入者にとっては、「地域型」か「職能型」かによって加入できる基金が異なってくるため、その点には注意しよう。

地域型国民年金基金

地域型基金は、平成3年5月に全国の47都道府県で設立された。地域型基金に加入できるのは、同一の都道府県に住所を有する国民年金の第1号被保険者であり、1,000人以上の加入者で組織されている。

職能型国民年金基金

職能型基金は、25の職種について平成3年5月より順次設立された。職能型基金に加入できるのは、各基金ごとに定められた同種の事業または業務に従事する国民年金の第1号被保険者であり、3,000人以上の加入者で組織される。

~国民年金基金と国民年金基金連合会の違い~

国民年金基金と似たような名前だが、国民年金基金連合会という組織がまた別に存在するのをご存じだろうか。

この国民年金基金連合会とは、国民年金基金の中途脱退者(60歳到達前に国民年金基金の加入員を資格喪失し、加入員期間が15年未満の者)等の老齢年金および遺族一時金の支給を共同して行う組織のことだ。元々国民年金基金に加入していた自営業者が転職してサラリーマンになるなど、加入期間の短い者が国民年金基金の加入員資格を喪失した場合に、この国民年金基金連合会にお世話になることになる。

中途脱退者が加入していた国民年金基金から国民年金基金連合会へそれまで積み立てた年金資産(掛金の現価相当額)が移換され、その中途脱退者は将来国民年金基金連合会から年金または一時金が支給される。

ちなみに国民年金基金が解散した場合には、解散した基金の加入員の責任準備金相当額(年金原資のようなもの)が国民年金基金連合会に納付され、当該連合会から給付が行われることとなる。そのため、仮に自分が加入していた国民年金基金が解散してしまっても、給付は受け継がれるため、掛金が払い損になるということはない。

さらに、平成14年1月から個人型DCもこの国民年基金連合会で実施しており、加入者の資格の確認、掛金の収納等の業務を行っている。

国民年金基金の加入条件は?

加入条件は、以下のとおりだ。

・日本国内に居住していること
・20歳以上60歳未満である国民年金の第1号被保険者であること、または60歳以上65歳未満であり国民年金の任意加入被保険者であること

そのため、以下のような人は加入できない。
・厚生年金保険に加入している会社員(国民年金の第2号被保険者)
・厚生年金保険に加入している被扶養配偶者(国民年金の第3号被保険者)
・国民年金の保険料を免除(一部免除、学生納付特例、若年者納付猶予を含む)されている者
・農業者年金の被保険者

基本的に会社勤めではない自営業者や厚生年金保険に加入していない短時間労働者(被扶養者でないこと)であれば、加入可能と覚えておけばいいだろう。

どういったときに加入資格を喪失するの?

20160507_2国民年金基金への加入は任意だが、付加年金を代行した公的な年金制度のため、加入後は途中で任意に脱退することはできない。では、加入資格を喪失するときというのはどのような場合だろうか。以下のいずれかに該当したときに加入員資格を喪失することになる。

・60歳になったとき
・65歳になったとき(60歳以上で加入した場合)
・国民年金の第1号被保険者でなくなったとき(海外に転居したときを含む)
・国民年金の任意加入被保険者でなくなったとき(60歳以上で加入した場合)
・他の都道府県に転居したとき(地域型基金の場合)
・該当する事業または業務に従事しなくなったとき(職能型基金の場合)
・国民年金の保険料を免除されたとき(一部免除、学生納付特例、若年者納付猶予を含む)
・農業者年金の被保険者になったとき
・加入員本人が死亡したとき

かなり該当要件があるが、第1号被保険者である限り基本的には継続して加入する制度と捉えることができる。もちろん他の都道府県に転居した場合や事業変更・業種変更をした場合には、加入している基金の種類により資格喪失せざるを得ない場合もあるため、注意したい。

なお、加入資格を喪失した場合、基金に支払った掛金は途中で引き出すことはできないが、 国民年金基金または国民年金基金連合会から、将来年金として支給される。他の都道府県に転居したとき(地域型基金)、該当する事業または業務に従事しなくなったとき(職能型基金)に加入資格を喪失した場合は、加入資格のある別の国民年金基金に引き続き加入すると従前の掛金で加入できる特例がある点は覚えておきたい(3ヶ月以内に手続きをすることが必要)。

国民年金との関係

国民年金基金に加入している場合、国民年金制度についていくつかの制約を受けることになる。やや特殊な場合が多いため、基本的に加入者が気にするような内容ではないが、一応紹介しておきたい。

国民年金保険料との関係

国民年金の保険料が未納のまま2年を経過すると、その期間に国民年金基金の掛金を納めていても将来の年金額に反映されない仕組みとなっている。そのため、第1号被保険者である限り国民年金保険料は必ず納付し続けなければならない。当然と言えば当然だが、もし未納で2年経過した場合、国民年金基金の掛金は2年経過した時点で還付されることとなる。

付加年金の保険料は収められない

国民年金基金に加入している場合、月額400円の国民年金の付加保険料を納めることはできない(国民年金基金が国民年金の付加年金を代行しているため)。

国民年金の繰上受給は、付加年金部分のみ

国民年金の老齢基礎年金を65歳前に繰上げ受給する場合、繰上げ受給期間中は国民年金基金から国民年金の付加年金に相当する分だけ支給される(この場合、65歳以降の国民年金基金の年金額は、付加年金相当分が繰上げ支給の時期等に応じて減額されたものとなる)。

免除期間の追納で、掛金上限がアップする特例あり

国民年金の免除期間について追納を行った場合、加入後一定期間国民年金基金の掛金の上限が10万2,000円になる特例がある。




どんな給付が受け取れるの?

国民年金基金の給付には、老齢年金と遺族一時金がある。基金の加入資格を途中で喪失した場合、一時金は支給されず、掛金を納めた期間に応じた年金が将来支給される。

老齢年金

老齢年金は、加入年齢と加入口数によって年金額が決定され、給付の型によって年金受取期間が決まってくる。なお、加入口数や給付の型は加入員が選択することとなるが、1口目と2口目以降で選択できる給付が異なる。

1口目の給付の型

1口目については、終身年金のA型・B型の2種類から選択することとなる。

A型:15年間の保証期間が付いた終身年金
B型:保証期間がない終身年金

A型とB型の大きな違いは保証期間があるかどうかだ。A型には、保証期間が15年付くため、保証期間内であれば死亡時に遺族一時金が支払われることとなる。

なお、どちらを選択した場合でも、支給開始される年齢は65歳からとなるが、年金額については以下のとおり何歳で加入したかによって変わってくる。

年金月額 2万円:35歳誕生月までに加入の場合
年金月額 1.5万円:45歳誕生月までに加入の場合
年金月額 1万円:50歳誕生月までに加入の場合
50歳以降に加入の場合は、加入月数によって年金月額は異なる。

2口目以降の給付の型

2口目以降は、終身年金のA型・B型と、確定年金のⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型、Ⅴ型の7種類から選択する。A型、B型は1口目で選択したものと同じ給付設計だが、年金月額が半分であるため1口あたりの掛金額も半分となる。

給付の型 支給期間 支給開始年齢 年金月額
Ⅰ型 15年間保証 65歳 1万円(35歳までに加入)
5千円(50歳までに加入)
※50歳以降の場合、
加入月数により異なる
Ⅱ型 10年間保証 65歳
Ⅲ型 15年間保証 60歳
Ⅳ型 10年間保証 60歳
Ⅴ型 5年間保証 60歳

主な違いは支給期間と支給開始年齢になる。それに応じて毎月の掛金額が異なってくる。

Ⅰ型~Ⅴ型を選択している場合に国民年金基金の加入員資格を途中で喪失すると、掛金を納めた期間に応じた年金額が将来支給される(一時金は支給されない)。

また、60歳到達前に加入員資格を喪失し、なおかつ加入員期間が15年未満であった場合は、国民年金基金連合会から給付が行われる(国民年金基金脱退時に年金資産が連合会へ移換される)。

ただし、60歳到達により加入員資格を喪失した場合や60歳以上で加入した場合には、加入していた国民年金基金が給付を行うこととなる。

遺族一時金

遺族一時金は、保証期間付きの終身年金(A型)または確定年金(I型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型、Ⅴ型)に加入している者が死亡した場合に支給される。年金受給前に死亡した場合は、加入時年齢と死亡時年齢および掛金納付期間に応じた額の一時金が遺族に支給される。また、保証期間中に受給者が死亡した場合は、残りの保証期間の年金を支給するための資産(年金原資)相当額が遺族に支給される。

また、保証期間のない終身年金(B型)のみに加入している場合でも、年金受給前に死亡した場合は1万円が遺族に支給される。少ないと思う人も多だろうが、単純終身年金の年金制度であって遺族給付がある点は、まだ親切な方だと思われる。

なお、遺族一時金が支給される遺族は、死亡当事生計を同じくしていた配偶者(事実婚を含む)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順となる。

掛金はいくら?

20160507_1掛金月額は、選択した給付の型、加入口数、加入時の年齢によって異なる。掛金の上限は、月額68,000円以内(個人型確定拠出年金にも加入している場合は、その掛金と合わせて68,000円以内)で選択する。

具体的な掛金額については、国民年金基金のパンフレットに詳細な掛金月額表が記載されている。ぜひそちらをご覧いただきたい。
国民年金基金ホームページ

ただし、国民年金の保険料を免除(一部免除・学生納付特例・若年者能風猶予を含む)されている者が免除期間分の保険料を全て追納したときは、追納した期間のうち最高5年間、掛金の上限が月額102,000円になる特例がある。

お得な税制優遇あり

国民年金基金は掛金が所得控除の恩恵を受けられるというメリットを備えた制度だ。

掛金は全額社会保険料控除される。社会保険料が抑えられるので、所得税、住民税を減らす効果も期待できる。一般の個人年金が最大で年額4万円までしか所得控除されないのに対し、国民年金基金は全額が対象となる点、非常にお得だ。国民年金基金のホームページでも以下のとおり、税制優遇を例示している。

例えば、課税所得金額400万円くらいで、国民年金基金の掛金が年額30万円の場合なら、所得税・住民税の合計で約9万円軽減され、国民年金基金の掛金は、実質約21万円となる。

一方で、給付受け取り時の課税方法についてはどうか。

年金で受け取る場合は、公的年金等控除を利用できる

年金で受け取る場合には雑所得として課税される。公的年金等控除を利用することができるため、税制面でも有利だ。

死亡時の遺族一時金は全額非課税

死亡時の遺族一時金は全額が非課税される。まぁ、当然といえば当然だ。

国民年金基金のメリット、デメリット

あくまで加入者側からした視点でメリットデメリットをまとめてみる。

メリット

給付の形態が終身年金であること

やはり終身年金を老後所得として確保できるという点は非常に大きいメリットだ。民間の生命保険等が提供している終身年金の保険商品と比べた場合、いかに国民年金基金が魅力的な制度かがわかるだろう。

税制優遇を受けられること

全額社会保険料控除の適用となるため、節税効果は非常に大きい。特に、所得の高い人ほどその恩恵は大きくなるため、活用しない手はない。

デメリット

途中脱退が基本的にできないこと

前述したとおり、国民年金基金の資格喪失には特定の要件を満たした場合でないと、脱退できない。加入口数を自分で調整できるとはいえ、安定的な収入を60歳まで確保できるかは自営業者の立場ではなかなか難しいと思える。

死亡時は不利な給付となること

保証期間の有無によって状況は大きく異なってくるが、終身年金であるB型であれば、死亡時に遺族一時金は1万円が支給される。もちろんそれまで支払ってきた掛金はほぼ掛け捨てとなってしまう。また、保証期間のあるA型やⅠ型~Ⅴ型であったとしても、払込元本がそっくりそのまま戻ってくることはなく、多少減額された金額(ホームページ上、明示されてはいないが、遺族一時金額からすると7~8割程度まで減額)が遺族に支給される。

他にも給付額が定額であるため、物価連動・賃金連動といった実質的価値を保つ仕組みがないことや、予定利率が1.5%と低い水準であることが挙げられる。

まとめ:自営業者ならば入っておくのが有利なのでは?

実は給付負担倍率だけで考えると、予定利率以上の恩恵はそこまで大きくないこの制度。もちろん終身年金であることから、企業に属さない者が長寿リスクをヘッジできる貴重な手段にもなっているのは確かであって、もし利用できるのであれば利用するのがよいだろう。

一方で、税制優遇を受けられる点も踏まえると、個人型DCとの併用で余力のある限り拠出することが望ましい。
なお、決して欠点のある制度設計でもないので、もっと普及していてもおかしくないと考えるが、いかんせん広告力が乏しいのが加入者数の低さの要因だろうか。ラジオCMぐらいでしか宣伝しているのを聞いたことがないので、もっと一般の人に認知される制度になってほしいと思う。

今回の記事はずいぶんと加入者視点の記事になってしまった。国民年金基金については財政問題が一時期話題になったこともあるので後日、制度の事業概要についても別記事で書いておきたい。


ひきこもりのライフプラン [ 斎藤環 ]


社労士パパが教える子育て世代のライフプラン

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