日本の年金制度シリーズ② ~財形貯蓄制度~

日本の年金制度シリーズ第2回は、「財形貯蓄制度」を紹介する。これは年金制度というには拡大解釈し過ぎな印象があるが、広く日本の企業に広まっている点や多くの人が利用している点から紹介したいと思う。なお、この財形貯蓄制度とは、「勤労者財産形成促進制度(財形制度)」のうちの1制度であり、財形制度には他に「財形給付金・財形基金制度」「財形持家融資制度」が存在する。これらについては別の機会で記事にしていきたい。

財形貯蓄制度って何?

一般企業に勤めているサラリーマンの中には、会社の福利厚生の一環で財形貯蓄制度なるものを導入している場合が多い。一般的に財形貯蓄とは、給与天引きで積立ができる制度であって、主に積み立てる貯蓄の用途により3種類に分類される。

一般財形貯蓄:3年以上の期間にわたって、定期的に(毎月又は夏季・年末のボーナス時期など)給与天引により、会社を通じて積み立てていく目的を問わない使途自由な貯蓄のこと
財形年金貯蓄:5年以上の期間にわたって、定期的に給与天引により、会社を通じて積み立て、60歳以降から5年以上の期間にわたり年金として支払いを受けることを目的とした貯蓄のこと。なお、利子等に対する非課税措置がある。(但し、加入時に55歳未満であること)
財形住宅貯蓄:5年以上の期間にわたって定期的に給与天引により、会社を通じて積み立てていく持家取得を目的とした貯蓄のこと。なお、利子等に対する非課税措置がある。 (但し、加入時に55歳未満であること)

具体的にどんなメリットがあるの?

では、財形貯蓄制度にはどのようなメリットがあるのだろうか。主なメリットを挙げてみた。

給与天引:直接銀行等へ行かずとも&知らず知らずに貯金を取り崩していたということもなく、貯蓄が可能となる。
税制優遇:財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄あわせて元利合計550万円から生ずる利子等が非課税とされる。 財形年金貯蓄については、年金の支払が終るまで非課税措置が継続され、老後生活の安定に役立つとされている。
財形持家融資の利用:財形住宅貯蓄の利用者は住宅を購入する際に、財形持家融資と呼ばれる融資制度を利用することができる。

一般財形貯蓄の場合、「税制優遇」や「財形持家融資制度」の恩恵が受けられないため、給与天引きが唯一のメリットとなってしまう点には注意が必要だ。




デメリットはあるの?

一方でデメリットはなんだろうか。こちらも見ていこう。

一般財形貯蓄では非課税措置がないため、20.315%※の源泉分離課税が利息に課される。
・財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄の場合は積立を途中で(2年間)中断すると非課税措置を受けられなくなるまた、目的外での引出しをした場合も非課税措置を受けられない。
・転職した場合に転職先企業に財形貯蓄制度が導入されていないと、積立が中断してしまう
・退職時も同様で新たな積立ができなくなり、財形年金貯蓄や財形住宅貯蓄の場合の非課税措置も一定期間後は受けられなくなる
・海外転勤や育児休暇を取得する場合には、所定の手続きを経る必要があり、そうでないと非課税措置等が受けられなくなる
・財形住宅貯蓄で引き出す場合には所定の要件を満たしている必要がある

※平成25年1月1日~平成49年12月31日までの25年間(内訳:所得税15%、復興特別所得税0.315%(=所得税15%*2.1%)、住民税5%)

利子が非課税というメリットがあるが、財形貯蓄制度はあくまで事業主と金融機関の契約に基づくものとなるため、一般的に普通預金や定期預金に多少色がついた程度の利率であることが多い。そのため、近年の低利率ではあまりその恩恵が多くないという点にも注意が必要だ。預入する金融機関によって、利率や金融商品により内容が変わってくるのでその点も契約時には確認しておきたい。

事業主にもメリットがある

実は、財形貯蓄の仕組みは事業主にもメリットがあり、

・従業員の貯蓄意識の喚起、勤労意欲の向上
・社内融資制度の資金を公的融資から調達可能になる(場合による)
・従業員の定着性を高め、優秀な人材確保に寄与する
等がある。

財形貯蓄が従業員に与えるメリットで、「従業員の定着性」や「勤労意欲の向上」「優秀な人材確保」が起きるかと考えると若干誇張した表現ではあるが、一般的な福利厚生制度としての恩恵はあるのではないだろうか。

どれくらい普及している制度なの?

平成27年3月末時点では、8,453万人の契約者がおり、総貯蓄残高は16兆円もの規模に上る。
人数と残高のここ十年間の推移をグラフでまとめてみたが、一般財形貯蓄では契約者数が減少しているにも関わらず残高は上昇していっていることが興味深い。

<各財形貯蓄の契約件数推移>
財形_1
いずれの財形貯蓄についてもここ10年以上にわたり契約者件数が減少している。

<各財形貯蓄の貯蓄残高推移>
財形_2
一方で一般財形貯蓄を除き、貯蓄残高は減少を続けている。一般財形貯蓄については、契約者件数が減少しているにも関わらず、貯蓄残高がわずかながら上昇していることから、これまで年金目的や住宅取得目的で貯蓄をしようとした層が、一般財形貯蓄で貯蓄をしているようにも見える。

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厚生労働省による調査では、企業規模が大きいほど財形貯蓄制度を導入している傾向があるが、年々導入割合が減少していっている。これも契約件数が減少していっている要因の一つとなっているのだろう。

まとめ:利子非課税と言っても低利率だから、住宅融資目的ならありかも

財形貯蓄制度は給与天引きの仕組みということもあり、自分では全く貯蓄できない人などにとっては比較的気軽に取り組みやすい貯蓄の仕組みだと思われる。しかし、税制優遇である利子非課税についても現在は利率が低くほとんど利子が付かないため、あまり恩恵があるとは言い難い。一方で、財形住宅貯蓄では貯蓄額を担保として融資が受けられるのは良いメリットかもしれない。住宅融資に係る利率も2016年4月現在0.9%(5年固定)となっており、一部の銀行には負けてしまうものの選択肢の一つとしては悪くはないのだろうか。

また、福利厚生制度としての仕組みを考えると今後さらに拡大するのは厳しいようにも見えてくる。現在はNISAの活用による税制メリットやネット銀行がより高い預金利率を提供している実態を考えると、従業員に強いメリットを現代社会で与えられていない。オプショナルな仕組みを併用しないことには、メリットを感じづらく事業主が導入する意欲を刺激できてないと思われる。

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