受託保証型DBはダメ?マイナス金利が与える負の影響

マイナス金利の影響により、受託保証型確定給付企業年金(以下、受託保証型DB)の受け入れに影響が出ているようだ。

受託保証型DBは確定給付企業年金の中では脇役的存在であるものの、総合型厚生年金基金の後継制度になったり、中小企業向けのDB制度普及に貢献したりと活躍の場は広い。そんな受託保証型DBがマイナス金利により雲行きが怪しくなっているという話だ。

ことの発端

今年の1月末、日銀は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入し、一段の金融緩和政策を行った。

このときにマイナス金利については、ずいぶんとメディアでも取り上げられGoogleの検索ボリュームが2015年12月と比べて70倍になるほど大きな注目を集めその影響についても専門家によるたくさんの意見や記事が発行された。

その多くは、マイナス金利が与える経済効果や家計への影響などが中心となっており、細々と資産運用に関してのコメントが散見された程度だったことを覚えている。

専門家による主だった指摘は以下のとおり。

・長期金利低下、為替への影響
・金利低下に伴う金融機関の収益悪化
・家計への影響(預金金利の低下、住宅ローン利率の低下など)




大手生命保険では、一般勘定の受託に歯止め

実は今回のマイナス金利の一件で、大手生命保険は一般勘定の受託に慎重な態度を取っているという知らせがある。

まず、あまり知らない方向けに「一般勘定」という言葉を説明しよう。

一般勘定とは

生命保険会社には一般勘定と呼ばれる運用勘定がある。企業年金連合会の説明によると、一般勘定とは以下のとおり。

一般勘定とは、生命保険会社の商品で、個人保険や企業年金資産等を合同して一つの勘定で運用する勘定。一般勘定は、元本と一定の利率の保証(保証利率)がされており、生命保険会社が運用のリスクを負うもの。また運用の結果次第では配当がある。(企業年金連合会HPより引用)

つまり、一般勘定は生命保険会社が損失を保証してくれるため、預ける側からすればほぼノーリスクで保証利率で運用してもらえる運用方法なのだ。では具体的にどのような資産運用を行っているのか。

一般勘定の資産運用

生命保険会社が保証利率を定めることから、投資家や被保険者は運用損失を考慮する必要がなくなる。その一方で、生命保険会社側は損失を出した場合は自社の負担となるため、ローリスク・ローリターンの資産運用方針を余儀なくされる。

基本的に資産運用においては、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式と短期資金等でポートフォリオを組むことになり、ローリスクを目指す場合にはどうしても国内債券にある程度の比率を確保しなければならなくなる

マイナス金利で国内債券の利回りが下がれば、必然的に運用利回りは下がることとなり保険会社が損失を穴埋めする可能性が高まることとなる。

受託保証型DBと一般勘定

DB制度の中には受託保証型DBというものが存在する。これは、確定給付企業年金法施行規則において「毎事業年度の末日における契約者価額が、数理債務の額を下回らないことが確実に見込まれるもの」として定義されており、積立不足が発生しない仕組みであるDB制度のことを指す。

そのため、必然的に生命保険会社の一般勘定を利用して運用を行うDB制度が受託保証型DBとなる。事業主が運用リスクを負わないで実施できる点に着目され、受託保証型DBは近年活用される場が増えてきている。

中小企業にとっては、企業の後発債務発生リスクを抑えることができる上に、確定給付を従業員に提供することが可能となるため、企業年金の普及策として期待が高まっている。また、厚生年金基金解散により行き場を失う企業の後継制度としても注目されており、さらなる拡大が予想されていたところだった。

明治安田は新規と増額を停止

今般のマイナス金利政策により、国債の利回りは大きく低下し、長期国債までもがマイナスの利回りを観測するに至った。

一般勘定で運用されている大部分は国債を利用している。そのため、国債の利回りの低下は一般勘定の利回りを引き下げ、生命保険会社に負担を強いる結果となることが予想される。

その結果、大手生命保険会社では受託保証型DBの引き受けに慎重な姿勢を取ることとなった。

例えば、明治安田生命保険は新規引き受けと既存契約の増額を4月から見合わせた、とのこと。
明治安田、企業年金の受託停止 マイナス金利で運用難
明治安田生命、確定給付年金の受託を停止 運用難で

また、日本生命保険や第一生命保険、住友生命保険も足元の運用環境をにらみ受託残高を大幅には積み増さない方針を取る、と報じられている。

これまでは個人の保険商品の利回りについて予定利率の引下げが実施されるなどの影響がすでにあったところだが、今回の件で個人だけでなく団体年金についても影響が出始めた結果となった。

明治安田生命では、販売停止を解く時期は現時点で決めていないという。一般勘定の予定利率は金利水準に合わせて変更されるが、現在は1.25%となっている。また、既に第一生命は2~3年前からすでに新規の受託を止めているとのこと。報道では、日本生命なども運用環境に応じた慎重姿勢を崩していない、とのことである。

まとめ:黒田バズーカは企業年金を粉砕するのか

受託保証型DBの件は、黒田バズーカの副作用と見るべきだろうと思うが、いかんせん思わぬところで企業年金の普及が阻止されることとなるとは厚生労働省の輩も思っていなかったのではないか。

厚年基金解散が時限措置であったために、受託保証型DBを後継制度として考えていた企業は手痛い路線変更をしなければいけなくなったかもしれない。

マイナス金利の異常状態が解除されれば、また再び受託保証型DBの受け入れについても順次再開されると思われるので、企業年金を考える立場としては早期に正常化してほしいと願うばかりである。


緊急解説 マイナス金利 (日経プレミアシリーズ)


マイナス金利 [ 徳勝礼子 ]

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2件のコメント

  1. 欧州がマイナス金利を導入しているので日本だけが一方的にマイナス金利を終了することは難しいかと思います。円安にならないと日本の景気は回復しないので、マイナス金利は当分続くと考え、受託保証型DBは少し忘れた方が良いかと。うちも厚生年金基金が解散して大変です(汗)

    1. マイナス金利の解除時期は不透明ですし、「受託保証型DBは少し忘れた方が良い」という点はごもっともですね。結局、大会社はともかく中小規模の会社は選択肢が広がらないのが残念な状況ですが。

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