公的年金改革により将来年金はますます下がる!?

先日(3月11日)、閣議決定された公的年金制度等の改革関連法案には、公的年金制度改革やGPIFのガバナンスの見直しなどが盛り込まれている。今回は、その中でも公的年金制度改革について一部内容を載せたいと思う。

※今回の記事はマクロ経済スライドを理解している方向け。

「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案」

第38回社会保障審議会年金部会

当該法律案では、主に「年金額の改定ルールの見直し」「短時間労働者への厚生年金の適用拡大促進」「産前産後の国民保険料の免除」などの見直し案が盛り込まれている。その中でも「年金額の改定ルールの見直し」についてはほぼ全ての日本国民に影響がある話だろう。

法律案概要では、

 「公的年金制度の持続可能性を高め、将来世代の給付水準を確保するため、年金額の改定に際して、以下の措置を講じる。

(1) マクロ経済スライドについて、年金の名目額が前年度を下回らない措置を維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で 前年度までの未調整分を含めて調整。

(2) 賃金変動が物価変動を下回る場合に賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を徹底。」

と述べられており、内容を知っていないとかなりわかり辛い記述となっている(ように思う)。

現在の年金額のルールは、現役世代の賃金水準・物価水準に連動するルール

そもそも年金額は毎年、物価・賃金に応じて改定するというルールが定められており、その基準となる指標が現役世代の賃金水準や全国消費者物価指数等となっている。さらに、過去の年金額水準や人口減少との調整のためにマクロ経済スライドと呼ばれる年金額の調整が実施されることとなっている。(マクロ経済スライドについては、別途記事を書く予定)

現在のルールだと、賃金や物価の伸びが小さい場合や下落したりする場合では、マクロ経済スライドは発動はしない。そのため、デフレ環境下であったり、経済の伸びがほとんどない状況下では、マクロ経済スライドはほぼ発動されないこととなる。

実際に2004年にマクロ経済スライドが適用されてから12年程になるが、その間は特例水準の解消(2.5%)をするために、マクロ経済スライドは凍結されてきた。そしてやっと発動ができたのが2015年だとのこと。

図1_2.png
(引用:厚生労働省HP)

新ルールは、賃金・物価上昇時にまとめてドカンと年金額を引き下げ!

新しい年金額の改定ルールは2018年4月から適用される見込みであるが、新ルールの元では賃金・物価上昇時は過去にマクロ経済スライドを発動しなかった分をまとめて反映させる方法となる。

つまりどういうことかというと、これまでマクロ経済スライドは賃金・物価下落時には発動されなかった。そのため、本来、財政検証等で考慮されていたマクロ経済スライドの時期がそっくりそのまま後ろ倒し(マクロ経済スライドの長期化)になり、将来世代の年金額の減少要因となっていた。

新ルールの元では、過去マクロ経済スライドを発動できなかった年度があったとしても、賃金・物価上昇をした年度に過年度含めてマクロ経済スライドを発動させることで年金財政の悪化の先送りを阻止するものとなっている。

図2_2.png
(引用:第38回社会保障審議会年金部会 資料)

さらに、賃金下落時・物価上昇時でも年金額は下げられるように

個人的には当然といえば当然だが、賃金下落時かつ物価上昇時においても賃金変動に応じて年金額が引き下げられることとなった。物価は上がるのに、賃金は下がる状況や物価・賃金ともに下がる状況など、なかなか過酷な経済環境下においても、賃金に合わせて年金額が引き下げられる。

社会保障の担い手である現役世代の賃金水準が下がっているにも関わらず、高い水準の年金額をもらい続ける高齢者はなんて優遇されているんだと思っていたが、これで多少その状況も是正されるのだろう。とはいえ、本当にそんな引き下げなどできるのだろうか。

将来・現役世代にとって今回の改正は改善、引退世代は改悪

一部の人は認知しているが、平成10年~12年では当時の政権が年金額を引き下げるべきタイミングで引き下げなかったことにより長きに亘り、財政不均衡となる特例水準での給付を実施することとなった。そのため、過去高い給付を支払っていたため、将来世代が受け取る年金額を引き下げねばならなくなっている。

今回の改正は将来・現役世代にとっては好ましい内容ではあるが、あまりメディアはこうは捉えていない模様。

一方で、公的年金が政治に振り回されるのはもはや目に見えているので、いくら経済好調時にマクロ経済スライドを過年度分発動させられるとはいえ、国民からの反発は多いにあるのではないだろうか。また、それを危惧した政権により特例水準のような話がまた出てくるのではないかと考えてしまう。

今回の法改正ではGPIF改革や短時間労働者への適用拡大などもあるので、気が向いたらそちらの記事を書いてみようと思う(いつになることやら)。

<ご参考>
最近よく聞くGPIFって何?

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