いろいろ出てくるぞ!公的年金は破綻・崩壊しているという主張を6つ紹介する

公的年金にまつわる様々な誤解は時代とともに多様な変遷を遂げてきた。最近では、公的年金破綻論を唱える謎の経済学者や評論家がずいぶんと淘汰され、あまり聞かなくなった。
(個人的には非常に寂しい限りである笑)

的を得た主張、的を得ていない主張が頻繁に飛び交い、一般の人々は、民主党政権時のイメージが強く残っていたせいなのか、ネット上でもリアルでもかなりのトンチンカンな意見を述べている場合が多数あるのが現状だ。

せっかくの機会なので、これまで年金制度破綻論としてメジャーとなったものを簡単にご紹介したい。なお、未だ現役で主張される破綻論もあるため、今後の展開にも期待したい。

その1 少子高齢化だから積立方式へ移行しよう

民主党政権時に大流行した「賦課方式から積み立て方式へ移行すべき」という主張である。

賦課方式と積立方式

賦課方式は、その年度に必要な年金給付額を、その年度の被保険者から保険料で徴収し、それを財源とする方法である。すなわち、その年に回収した保険料=その年の給付額原資、ということだ。

一方で、積立方式は、被保険者の保険料を積み立てていき、その被保険者が受給世代となったときに、積立金を給付の財源とする方法だ。これは、個人個人が老後の資金を積み立てていくイメージに近い。

少子高齢化に世間のスポットが浴びせられたため、少子高齢化に強い積み立て方式は一躍優秀な制度として報道されていた。

根本的な欠点を複数持つ積立方式

ここでは、詳細には記載しないが、積立方式には欠点が複数ある。

  • 経済変動リスクに脆弱である
  • 資産運用実績で将来の給付水準/追加負担の要否が変化する
  • 先進国では導入実績がなく、発展途上国では経済危機による年金困窮化もあり
  • 移行するまでに多大な時間やコストが必要

このような理論上の厳しい背景と、専門家会議における複数の試算結果から積立方式の採用は負担感や不公平感を拡大させ、将来の安定に寄与しない仕組みであることが認知されていった。

その2 公的年金は債務超過で崩壊している

当時、公的年金には債務超過が580兆円もある、という意見が主張された。

これは、年金の財政方式に関する主張で、「将来の保険料と将来の給付が対応している」ことに基づいている。当時、問題として指摘されたのは、以下2点。

  • 将来の保険料に相当する給付と将来の保険料及び国庫負担では足りないこと
  • 過去の保険料に相当する給付と、積立金及び国庫負担では足りないこと

これを図に示すと以下のようなものとなる。

20161009_003

(出典:厚生年金の債務超過に目を向けよ バランスシートが教える改革の道筋『日本の論点2004』2003 年11 月)

なぜこのようなヘンテコな話が出てくるのかはさっぱりわからないが、公的年金の財政方式を賦課方式と積立方式を誤解した人が唱えていたようである。

賦課方式と積立方式の仕組みからすれば、足りないというか対応しないのは当然であるし、当時将来保険料が段階的に引き上げられる点も考慮されていなかったことも、誤解を招いた要因であった。

なお、最近ではこの手の債務アンバランス論は、ほぼ聞かなくなってしまった。



その3 世代間格差があり過ぎる

あまり専門家や経済学者が主張しないが、最近でも現役で主張される世代間不公平論がある。特に、テレビやマスコミの評論家、ネットコメントには非常に多く見受けられる。自分も世代間不公平については、度々問題視するポイントだ。
(若干自分の意味するところが異なる場合が多いが)

よくある利己的な立場からの主張

基本的に、若い人は保険料の負担が大きいのに対し、昔の人は保険料の負担が小さい上に高い年金額をもらっている、というのが主張の骨子。

公的な国民全体で支えあう社会保障を個人レベルの損得で考える点は、個人的にどうかと思うが、世代間で給付と負担の差が大きくなっている点は問題である。

格差をなくす方法

ただ、一方で世代間における給付と負担の差を減らす方策は何かしらあるにせよ、その差が全くなくなる方策がないことも事実であることが、過去の議論から示されている。

世代間において経済成長や社会インフラの高度化、前世代からの相続や住宅支援という恩恵を考慮すると、公平とは年金の額面だけで判断できるものかと思わざるを得ない部分もある。

そもそも公平とは何か、格差がないとは何か、それを決めることすら難しいのがこの問題を複雑にする根幹だ。

格差はなくならないがあってもよいものではない

だが、現在の現役世代の負担感は経済成長が止まってから25年間、ずっと上がり続けている点は認識しておくべきだろう。法令で定められたとはいえ、保険料の負担のために、消費が鈍化し、経済成長できなければ元も子もない。

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いずれにせよ今現在でできる方策はあくまでもこの給付負担の世代差が、極端に大きくならないようにすることであり、差を縮める施策が求められているのである。

その4 未納者が多くて破綻する

こちらも「未納者が多い=保険料が集まらない=年金制度が破綻する」という何とも無知が故の主張がずいぶん前まで存在した。ネット上にも未だにこの手のコメントを残す人も多く、いかに誤解されているかがわかる。

今更ではあるが、未納問題は以下のような点から主張として相手にされなくなっていった。

  • 「国民の4割が未納である」のは国民年金の納付率の話。公的年金全体では納付率は5%未満である
  • 未納者は将来年金額が支払われなくなるため、影響は小さい
  • 政府のシミュレーション結果では、所得代替率の影響は0.5%程度と誤差の範囲

その5 第3号被保険者問題

公的年金の破綻論とは、やや話がずれるところではあるが、財政破綻という意味合いではなく、公平性の破綻として問題視されるのが、第3号被保険者問題だ。

専業主婦は優遇されている

第3号被保険者については、公平感という点で様々な問題点を持つため、それら総称を第3号被保険者問題と呼ぶことが多い。例えば、

・第3号被保険者の給付負担は、母子家庭(父子家庭)、独身男性女性、共働き世帯も負担をしている
・第1号被保険者である自営業者の扶養者との公平性
・保険料免除者は免除種類によって年金額が減額されるのに対し、第3号被保険者は満額給付される点

などなど。

世帯単位で同じ年金額ならば問題ないのか

世帯単位でみてみると、所得金額が同じである場合は世帯合計での年金額は同額となる点から、問題ないと言われる場合もあるが、保険料が異なる点を考えると、完全に年金制度のスイートスポット化していると言わざるを得ない。

なお、被用者年金の拡大や配偶者控除の検討に伴い、第3号被保険者についても是正される流れが迫っている。

その6 低年金・無年金者問題

最後に一番、現実的かつ危機的問題として真面目に考えなくてはいけないのが、低年金・無年金者問題だ。

第1号被保険者の老後所得確保

年金制度としては、現在の仕組みでほぼ完成しており、給付と負担の関係から年金制度が破綻を招くことはほぼないこととなっている。
(逆に、最近ホットな年金制度破綻論がないのも寂しい限りだが)

社会保障という観点から考えた場合に出てくるのが、低年金・無年金者問題だ。

よく誤解されるが、第2号被保険者は厚生年金に加入しているため、基礎年金部分と報酬比例部分を合わせて所得代替率50%が確保されるよう制度設計されている。

一方で、第1号被保険者については、基礎年金部分しか公的な年金給付がないため、基礎年金以外の老後所得を備えておく必要がある

国の立場からしても基礎年金だけでは、到底老後暮らしていけるとは思っていないのは確かであり、第1号被保険者については個人で備える必然性があるといえる。

非就労者かつ単身者はどうなってしまうのか

一番の問題とされるのが、現在就労せず、第2号被保険者に所属していない単身者であろう。彼らのような立場であると、将来の備えどころか、現在の保険料すらも未納している可能性があり、将来は生活保護の対象となる可能性が大いにある。

生活保護と年金制度は全く別の話であるが、混同して議論されることが多い上に、その解決策を税方式で解決しようという本末転倒な論理を掲げる人も多い。

なお、現在のような生活保護の認定要件が緩いものは、将来的には相当程度厳しくなるのは間違いないだろう。

基礎年金をすべて税負担とする対案

現在、保険料と国庫負担で賄っている基礎年金部分の給付であるが、この財源を「年金目的消費税」と言った名目で徴収することなる。

言うのは非常に簡単だが、実施するのは大変難しい方策として有名になった。実は、ベーシックインカムと理念とするところが同じであるため、単純そうに見えるが全くそうはいかない。

例えば、

  • 税方式であっても生活レベルの給付水準を維持することはできない
  • 現在の人について納得感のある移行措置が作れるか
  • 巨額の財源確保
  • 家計にさらなる負担が加わる仕組み
  • 将来の給付削減圧力がかかりやすい
  • 医療、介護等のその他の社会保障費が財源確保でさらに圧迫

根本的に財源をどうするのか、という点がネック。また、問題の柱である低年金者問題については、税方式での解決は見いだせないのが特徴だ。

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まとめ

最後に、専門誌「年金実務第2000号」において慶応大学教授の権丈先生が年金制度について、極めてわかりやすい説明をしているので今回のまとめとして、その一部を紹介したい。

今のこの国の年金制度を考えると、保険料率が固定されるわけですから保険料収入は決まっています。そして、概ね100年で最終的に積立金は1年分にするということも決まっています。ということは、年金という制度に入ってくる総額と出ていく総額は決まってしまっていることになる。
あとは、年金受給が年次的に早めの人が一杯もらうか、後ろの人が一杯もらうかという話に集約されます。将来世代の人たちよりも所得代替率が高い今の高齢者の給付を早めにカットすることができれば、将来世代が楽になるということです。

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