【2016年】今年昇給した?世間一般の昇給事情について解説する

先日、厚生労働省が”平成28 年「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果”を公表した。この調査は、日本の企業が2016年に賃金を引き上げたかどうか、またどの程度引き上げたか、と言ったその年の賃金事情をまとめた調査報告資料である。今回は、賃金にまつわる昨今の動向について、2016年の状況を俯瞰してみる。

昇給の仕組み

調査結果を紹介する前に、誤解を生まないためにも、厚生労働省が定義する「昇給の仕組み」について紹介する。

・すべて若しくは一部の常用労働者を対象とした定期昇給
・ベースアップ
・諸手当の改定
などを昇給いい、ベースダウンや賃金カット等による賃金の減額も含む。

賃金の改定には、定期昇給、ベースアップ、諸手当の改定の3種類に分類される。学術的にこの分類が正式に正しいかは置いといて、実態の賃金改定はこの3種類で基本的に説明できる。

  •  定期昇給
    あらかじめ労働協約、就業規則等で定められた制度に従って行われる昇給のことで、一定の時期に毎年増額することを指す。年齢、勤続年数による自動昇給のほかに、能力、業績評価に基づく昇給があり、毎年時期を定めて査定を行っている場合も含まれる。
  •  賃金表(ベースアップ又はベースダウン)の改定
    ベースアップとは、ときに”ベア”と略されることもある。これは、 給与体系における賃金表の改定により賃金水準を引き上げることを指している。一方で、ベースダウンは、 賃金表の改定により賃金水準を引き下げることを指す。この賃金表は、一般的に 学歴、年齢、勤続年数、職務、職能などによって決定されていることが多く、業績や単年度のパフォーマンスには依存しないものが一般的に用いられている。
  •  諸手当の改定
    企業には色々な手当があるが、能率手当、生産手当、 役付手当、特殊勤務手当、技能手当、技術手当、 家族手当、扶養手当、通勤手当、住宅手当、その他の手当など。なお、時間外・休日手当及び深夜手当等の割増手当や慶弔手当等の特別手当は除かれる。

なお、ここまでは賃金がアップする状況を想定しているが、”賃金カット”というのももちろん存在する。これはベースダウンとは異なり、賃金表等を変えずに、ある一定期間につき、一時的に賃金を減額することを指している。

さて、ここからは実際に2016年の賃金がどうだったかを紹介しよう。

賃金引上げを実施した企業の割合は86.7%

全企業のうち、2016 年中に「1 人平均賃金を引き上げた・引き上げる」と回答した企業は86.7%(前年85.4%)で、前年を上回った。

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※厚生労働省”平成28年「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果”より筆者作成

1992年までは、98%以上という非常に高い水準で賃金改定を行っていたが、その後バブル経済の崩壊後は改定する企業割合は低下していき、2002年、2003年では改定する企業割合は70%未満となった。この改定する企業割合には、賃金の引上げを行う企業と引下げ企業の両方が含まれており、その合算割合となっている。

引上げ企業と引下げ企業については、1999年よりデータが存在している。

なお、賃金の引下げについては、リーマンショック後に当たる2009年に過去最大の12.9%の企業が引下げを実施した。それ以降は平均賃金の引上げ企業割合は上昇傾向、引下げ企業割合は減少傾向となっている。

賃金の改定額は+5,176円

2016 年の1 人平均賃金の改定額(予定を含む)は5,176 円(前年5,282 円)で前年を下回った。この賃金改定率は+1.9%(同+1.9%)で前年と同水準だった。

一方で、従業員数が300~999 人規模、100~299 人規模の企業では改定額、改定率とも前年を上回ったとされている。具体的には以下のとおり。

※1 人平均賃金とは、所定内賃金(時間外手当、休日手当等を除いた毎月支払われる賃金)の1 人当たりの平均額を指す

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※厚生労働省”平成28年「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果”より抜粋

このように2015年の状況と比較すると、従業員数が1,000人以上の企業は賃金改定の改定幅を縮小しているものの、従業員数1,000人以下の中小企業にあっては2015年より改善した傾向が現れている。

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※厚生労働省”平成28年「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果”より筆者作成

賃金改定額も1992年頃から減少傾向にあり、2002~2003年頃、2009年に非常に低い水準まで落ち込んだ。当時の水準と比較すると現在は多少高い水準にはあるものの、過去の水準と比べてもまだまだ低い水準であることが言える。

なお、1991年以前は物価上昇率が賃金改定率に含まれているため、単純比較してよいわけではない点に留意が必要。

定期昇給制度の有無及び実施状況

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※厚生労働省”平成28年「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果”より抜粋

今回の調査結果では各企業がそもそも定期昇給制度を有しているかについての調査をされており、管理職、一般職のそれぞれで定期昇給を行う仕組みがあるかわかるようになっている。

管理職の定期昇給制度の有無をみると、「定期昇給制度あり」が73.9%(前年76.3%)、「定期昇給制度なし」が24.1%(同22.7%)となっている。また、一般職では、「定期昇給制度あり」が82.2%(同83.1%)、「定期昇給制度なし」が16.1%(同16.5%)となっている。

全体の2割前後が定期昇給を行わない仕組みとなっており、管理職の方が定期昇給という仕組みから外されている傾向にある。

なお、定期昇給を「行わなかった・行わない」の割合が最も高いのは、管理職、一
般職ともに100~299人規模となっており、中小規模の企業の方が昇給には後ろ向きという傾向が現れている。

ベースアップの状況

定期昇給制度がある企業のうち、2016年中にベースアップを「行った・行う」は、管理職17.8%(前年20.5%)、一般職23.3%(同 25.0%)で、ともに前年を下回った。

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※厚生労働省”平成28年「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果”より抜粋

ベースアップは2015年と比較すると、その実施状況は控えめという結果になったようだ。2016年前半では、株式市場の低迷やマイナス金利政策などにより、物価上昇圧力は高まっていたものの、市況そのものは低迷していた結果もあり、ベースアップにはブレーキが若干ながら掛かった傾向が伺える。

また、一方でアベノミクスを始めとした経済政策から3年間経つものの、一向にして企業の賃金水準を上げる動きが生じていないのも特徴と言える。今回の結果では、企業全体の2割前後がベースアップの改定を実施するにとどまっており、それ以外の企業は定期昇給に含める形で賃金改定を実施したという結果だった。

これはすなわち恒久的な賃金上昇をする訳でなく、あくまで一時的に賃金・物価水準の上昇分を定期昇給に織り込んでいるに過ぎない。



賃金の改定事情

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※厚生労働省”平成28年「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果”より抜粋

2016年中に賃金の改定を実施し又は予定していて額も決定している企業について、賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素をみると、以下のようなものとなっている。

  • 企業の業績:51.4%(前年52.6%)
  • 労働力の確保・定着:11.0%(前年6.8%)
  • 親会社又は関連(グループ)会社の改定の動向:5.9%(前年5.4%)
  • 雇用の維持:4.6%
  • 世間相場:4.2%

企業規模別にみても、すべての規模で「企業の業績」が最も多くなっているのが特徴だ。やはり賃金の改定は、企業業績に左右されるもの、というのは予想通りと言えよう。

ボーナスの支給状況

労働組合のある企業で、昨年の冬と今年の夏の「賞与の要求交渉を行った企業」のうち、『年間臨給状況が「夏冬型」又は「冬夏型」の企業』についてみると、「年間要求交渉を行った企業」は49.9%(前年41.5%)だった。

「1人平均年間賞与要求額」及び「1人平均年間賞与要求月数」は、それぞれ1,516,084円(同 1,486,334円)、5.24か月(同5.24か月)となっている。また、「妥結した企業」は42.6%(同 39.2%)、「1人平均年間賞与妥結額」及び「1人平均年間賞与妥結月数」は、それぞれ1,616,270 円( 同1,573,846 円) 、4.89 か月( 同4.86か月)となっている。詳しくは以下の通り。

2016年 1人当たり
平均年間賞与
支給額
1人当たり
平均年間賞与月数
2015年 1人当たり
平均年間賞与支給額
1人当たり
平均年間賞与月数
5,000人以上 1,916,301円 5.21 1,844,408円 5.32
1,000~4,999人 1,537,551円 4.96 1,517,736円 4.83
300~999人 1,335,281円 4.58 1,268,537円 4.62
100~299人 1,088,983円 4.38 1,171,977円 4.27
1,616,270円 4.89 1,573,846円 4.86

※上記支給額として、「1人平均年間賞与妥結額」及び「1人平均年間賞与妥結月数」を記載
※厚生労働省”平成28年「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果”より抜粋

2016年、2015年ともに、年間5ヶ月程度の賞与が支給されていることがわかるだろう。支給額についても、平均1,600,000円が支給されており、世間一般でイメージされている賞与額を上回っているのではないだろうか。

まとめ:賃金は増加傾向、実感は横ばいか

調査結果の数値だけ見ると、賃金は増加傾向にあると言える。物価変動率が未だ2.0%の目標を達成できていない現状を考えると、実質的な賃金上昇率はプラスにあるはずなので、以前よりは日本経済は改善している状態にあるとも言える。

しかしながら、国民健康保険料、厚生年金保険料の増加、消費税8%の負荷を考えると、実態生活においても給与上昇で生活に余裕が生まれている実感はほぼない、というのが大多数なのではないだろうか

あくまで今回並べた数値は支給額や改定率を記載しているに過ぎず、2016年にさらに増えた課税状況を反映している訳ではない。実際の手取りベースで比較した場合には、また別の結果がおそらく見えてくると思われる。また、最新情報があれば、アップデートしていきたい。


世界一やさしい 経済の教科書1年生

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